8話 私が選んだスキル
「すご!ほんとに一瞬で戻れちゃった…」
スキル《転移》
これが、私の選んだ2つ目のスキルだ。一度訪れたことのある場所なら基本的にはどこにでも瞬間移動が出来るというとんでもなく便利なスキルである。
ただし、転移先の場所をしっかり頭に思い描くことが大事で、記憶が曖昧ではっきりしない場合には失敗することもあるようなので、少し注意が必要だ。
さらに、ダンジョン内部からダンジョンの外へ直接転移することは出来ないらしい。ただ、ダンジョン内転移は可能なようなので、一階層に戻って外に出てから転移すればいいだけなので、問題はなさそうだ。
私がこのスキルを選んだのは、まずそもそも拠点とする島が人の住む大陸からかなり離れているということ。世界中のダンジョンに潜ってスキルブックやお宝を集めたり、鍛錬をしようと考えていること。そして、フォルティナ様からの希望をかなえるためにも、この世界のいろんな場所をめぐる必要があること。これらが主な理由である。
まぁ、あとは危険が迫った時に咄嗟に逃げるのに有用だなとは思ったりしている。さっきのカニの魔物だって、転移のスキルを咄嗟に使えるレベルまで習得していれば、すんなり逃げ切れただろう。
この島に危険はないからなんて、たかを括っていたので、朝の探索の帰りに練習をかねて初めての転移魔法を使うつもりだったのだ。
発動が上手くいかなかった時のことを考えて、念の為木に目印もつけておいたのだが。
ここは異世界で、私はまだ10歳の力のない少女だ。油断したら、大怪我じゃすまないかもしれない。油断大敵、と改めて心に刻む。
「ひとまず、お昼ご飯食べてちょっと休憩だな」
私は、今朝の森の探索で採取しておいた食料を麻袋から取り出し、簡単な昼食とした。
「まだ材料が揃わないから仕方ないけど、しばらくは野草とキノコの塩コショウ炒めを食べる羽目になりそうだなぁ」
と少し遠い目をしながら、食べた。
いや、一通りの必要なものを揃えてもらえているだけ、ありがたいのだ。
ここからどう発展させていくのも、全部自分次第じゃないか。こんなに楽しいことはない!
そう思い直して、食材に感謝をしながら昼食を食べ終えた。
少しの休憩ののちまた1時間ほど、魔力循環のトレーニングをした。まだまだ先は長そうだ。
さて、元の予定ではこの後は午後の探索にまた森へ入る予定だったのだが、予定変更だ。あのカニのせいで。
いや、今となってはカニのおかげでと言うべきか。
今朝のいきなりの魔物との遭遇で気付いたことがある。
それは、『陸上にだって危険な生物いるのでは?』である。
そう、私はとんだ思い込みをしていた。なにも、魔物だけが私の命を脅かす存在だとは限らないではないか。まだ小動物しか見かけていないが、熊や猪のような大きな生物だっているかもしれない。そんなものに遭遇してしまえば、今の私なんてひとたまりもない。
出会う前に気付けて良かった。ありがとうカニさん。いつか、美味しく食べてあげるからね。
というわけで、まず私が今すべきことは全てのスキルをある程度使えるようにする!である。
特に転移は早々に鍛えよう。逃げることにおいて、これ以上のスキルはないだろうからね。
とりあえず今の自分を改めて確認しようと思い、私は『ステータス』と心の中で念じた。
《アスカ サメジマ》※変更可
◇人間 性別:女 年齢:10歳
◇Lv:1 HP:100/100 MP:50/50
◇保有スキル
鑑定Lv1
転移Lv1
創造Lv1
召喚Lv1(0/2)
◇魔法適正:全属性 特殊:ウキペディア
⭐︎創造神フォルティナの加護(状態異常無効、精神異常無効)
「ほんとにゲームみたい。昨日の夜も見たけど、さすがに何も変わってないみたいねー」
さすがに半日では、ステータスに変動はないようだ。そらそうだ。たいして何も出来ていないのだから。
HPは年齢×10くらいが平均的な数値だと言われているので、ぴったり平均にしてくれたようだ。レベルをあげたり、身体を鍛えることでHPは増えていくので、頑張りたい。
おそらくMPは多過ぎず少な過ぎずくらいにはしてくれているだろう思われる。こちらも、魔力循環で伸ばしていこう。
スキルは、鑑定、転移はすでに使ってみたが、あとの2つはまだ試していない。どちらも、私に必要だと思って取ったスキルなので、有効活用したいと思う。
魔法の全属性適正は、フォルティナ様からのサービスだ。本当に至れり尽くせりでありがたい。全属性使えるということは、自分の努力次第であらゆることが魔法で可能になる、と私は読んでいる。フォルティナ様は魔法はイメージが大切だと言っていた。地球の技術をこちらの方法で実現するためにも、魔法はかかせないと思っているので、早く全属性使いこなせるように頑張ろう!
そして、注目すべきは特殊の部分だ。
実はフォルティナ様から選んでいいと言われたスキルを5つから4つに減らすかわりに、これをお願いした。
特殊:ウキペディア
読んで字の如く。あの、ウキペディアである。地球上の様々な情報を知る時に便利なあのサイトである。
たいした知識も技術もない私がこちらの世界で役に立つためにはと、考えに考えて出た結論が
『とりあえずなんとなく分かれば、魔法とスキルでゴリ押し出来るのでは?』だった。
なので、読めばなんとなく理解できるウキペディアを、こっちの世界でも自由に閲覧できれば、私役に立てます!とフォルティナ様に訴えた結果、普通になんとかしてくれた。
転生前の地球にいる間に、私という存在そのものにウキペディアをインストール(?)してくれたようだ。
今も、知りたいことを思い浮かべれば地球の知識が浮かんでくる。もはや、歩く辞書である。
最後の加護に関しては、お願いして来てもらうのだから、加護くらい与えて当たり前。とのことで、ありがたく頂きました。