6話 転生2日目
「う~ん、今日もいい天気!」
ベッドから起き上がり外を見ると、雲一つない快晴だった。
昨日は拠点周りの確認と、少しだけ周辺で野草やキノコを集めてきて、それを調理して食事にした。
火や水は、書斎の本から生活魔法についてかかれた本を選んで一通り目を通し、軽く練習しただけで本当に使えるようになった。まぁ、子供でも6歳を過ぎると自然と使えるようになるようなので、当たり前ではあるのだが。魔法のない世界から来た私としては、手から火や水が出てくるとは驚きでしかない。
食後は初日なので無理はせず、今後の生活をどうするかゆっくりと考える時間にあてた。
というわけで、今後やる事は昨日のうちに考えてある。
まず、必ず毎日やる事は3つ
・体力づくり、筋トレ
・魔力循環トレーニング
これは、今後私が自由に生きるために絶対にかかせない条件への第一歩である。誰にも何にも縛られず、自由に好きなことをしながら、この世界を発展させていくためには、絶対に強さが必要だ。どんなに口が達者で、才能があっても、力で無理矢理おさえつけられてしまえばどうしようもない。とはいえ、まだ10歳の身体なので、しっかり身体作りから始める。
そして、魔力循環トレーニングとは、魔法を使うときにだけ意識を向ける魔力を普段から常に意識し、循環させ、自在に操作できるようにするためのトレーニングだ。これを行うことで、身体と魔力が馴染んでいき、器が広がり魔力量の最大値を増やすことが出来るらしい(神様談)。頑張る。
そしてもう1つ
・スキルの理解度をあげる
転生時に神様からいただいたスキルだが、ただもっているだけでは宝の持ち腐れだ。使いこなしてこそ、真価を発揮する。『使える』と『使いこなす』では意味が大きく違うのだ。様々な使い方をしてみることで、新たな発見があるかもしれない。なので、毎日スキルを使い、スキルについて考え、有用な使い方を模索していこうと思う。
また、生きていくための食料の確保や、少しずつ拠点も充実させていきたい。
お風呂とかお風呂とかお風呂とか。
生活魔法のクリーンで一応、清潔に保てるのだが、違う。なんか違うのだ。
やっぱりお風呂に入って、あぁ今日も一日頑張ったなぁをやりたいので、早めにお風呂を作る目途をたてたい。
ちなみに、食料確保については実はそんなに心配していない。
この島、魔物や危険な動物はいないのだが、その代わりダンジョンがあるらしい。
この世界のダンジョンとは、ダンジョンコアが生み出した魔物が中を徘徊していて、その魔物を倒すと死体は残らず、武器やアイテム、魔物の素材など様々な物をドロップするらしい。その、様々な物の中には、調味料や野菜などの食料品も含まれるんだとか。
なんでやねん!と、思わずツッコミを入れたくなるが、今の私にはありがたいのでよし。
ダンジョンによってドロップしやすいものの傾向があるらしいが、この島のダンジョンは食料ダンジョンと呼んでも差し支えないくらい、食料系が多くドロップするダンジョンだと、フォルティナ様のお墨付きだ。
出てくる魔物も階層を潜るごとに徐々に強くなってはいくが、浅い階層には雑魚しかいないようなので、ピカピカの異世界1年生の私の戦闘訓練にも向いているといえるだろう。
とはいえ、なんの準備もせずに向かうほどお気楽ではないので、しばらくこの身体とこの生活になれることを優先する。周辺に食べられる野草やキノコがあるし、探せば木の実もあるだろう。海で釣りもできる。
少しの間なら、食料には困らないはずだ。
さて、それじゃ軽く朝食を食べて、トレーニングといきますか!
外に出て、地面に座り込んだ私は目を閉じて座禅を組んだ。
ちょうどいい気温で、さわやかに吹いている風が心地いい。
まずは自身の魔力を感じることから始める。魔力循環の第一歩だ。
昨夜読んだ本によると、誰しも必ず魔力をたくわえる器が体内にあり、そこから魔力を体外に放出して魔法へと変換しているそうだ。
生活魔法を使ったときも、確かに体内から何か抜けていくような感覚があったので、それが魔力だろう。
その時の感覚を思い出しながら、私は体内の魔力と向き合った。
1時間ほどそうしていただろうか、最初はつかめなかった魔力がなんとなくその存在を意識できてきた。
ただ、まだ循環させるというコツが掴めない。動かそうとすると、そのまま体外へ放出しそうになる。
私は一旦そこで目を開けた。かなり集中していたからか、じんわりと汗ばんでいる。
「ふぅ、これは今日明日ですぐに出来るものでもなさそうだな。まぁ、そう簡単に出来るなら、このやり方で魔力を増やせるって誰か気付いてるよねぇ」
私は苦笑いしながら、立ち上がった。
「ま、時間はたっぷりあるし、焦らずにやっていきますか」
簡単に出来るものではないと悟った私は、毎日の食事後に3回この時間を設けることにした。
汗ばんだ身体をクリーンですっきりさせた私は、トレーニングをかねて島内を見回ることにした。
昨日は家のすぐ近くをうろついただけだ。
私は着替えとかと一緒に神様が用意してくれていた、バッグを手に持ち中身を確認する。
と言ってもほとんど入っていない、小型のナイフに、あとは空の麻袋が数枚だけである。
飲み水は魔法で出せるので問題なし。
「よし、しゅっぱーつ!」
私は初めての冒険へと向かうようなワクワクとした気持ちでその一歩を踏み出した。