君が終わるとき
「そんな馬鹿な」
男がやっとこさ絞り出すようにして外に吐き出した言葉は、激しく狼狽し、困惑し震えを孕んだものだった。その言葉を皮切りに彼女の赤みがかった瞳のふちからじわじわと涙がたまり始めた。テーブルに置かれた真っ白い紙。それは彼女の診断書だった。男はその診断書を握りしめるようにしてかすれた声でつぶやいた。
「診断名ゾンビ病────」
「なんかのドッキリやろ、洒落にならん冗談やめてや」
その突きつけられた診断書を見たくなくて、真実から目を背けたくて男の口をついて飛び出たのは診断名を否定するような言葉だった。女はぼろぼろと雫をこぼしながら嗚咽混じりの声で医師から告げられたら内容を語り始めた。
[診断 ゾンビ病]その名の通りである。
1億人に1人発症するかしないかで、症状が進行していくにつれ体が腐敗してゆき、人間としての生き方を忘れ記憶をなくし人々を蹂躙し脅かすバケモノへと成り下がる病気だ。診断書には異常なまでの体温の低さと記憶の欠落を示唆するような描写があった。彼女の手を握る。
柔らかく、温もりのあったはずの小さな手はいまや氷のように冷たく固い感触へとかわっていた。
ゾンビものの恋愛。
関西弁の響きがすきです。
多くの人に感動と衝撃を届けられたらなと思います。
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