第1章 暴走少女 プロローグ 1
女子高生連続昏睡事件
初夏。
時刻は午後九時頃。
塾からの帰りに、得体の知れないナニカから私は追われていた。
ナニカとは言うものの、辛うじてそれは人間とだけは解った。
街灯が少ないこの暗がりの通路で、手と足、セミロングヘアだろうか、顔は明暗の影で見えなかった、恐らく女性。
現在進行形で追われているにも関わらず、冷静に相手が見れていた。
私の意外な一面を発見した。
と、そんなことを考えている暇などない。
息は切れ切れ。
勉強はできる方だが、運動はあまり得意な方ではない。
しかも、学校の帰りに塾に行ったので靴はローファーとこれまた走りにくいのだ。
全身からは、汗が拭き出て気持ちが悪い。
塾から自宅までに近道があるのだが、その道を利用したのが彼女の運の尽きだった。
ここからでは、大通りの道も遠い。恐らく、それまでには捕まってしまうだろう。
何とか自宅まで逃げ切りたい。そんな一心で懸命に走る。
が、ジワジワと追い詰められた。
こちらの位置がわかっているかのように。
この周辺の地理にでも強いのだろうか。
追っ手は走っては来ない。
私に向かって最短距離で追い詰めてきているのだ。
そして、とうとう私の体力の限界がきた。