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第7話 初除霊

「合体してなんでそんな大きさになんだよ!」


 融合したことより、質量が四匹の合計より増大したことに、リクはツッコミを入れる。


「これ、俺達じゃまだ無理かな?」

「一撃で倒せる奴が四匹くっついただけなら、四人でやれば倒せるんじゃない?」

「私もなんか無理な気がします……」


 一人楽観的なミカに、ユイトとアオイは足を後ろに引きつつ巨大な相手を見上げる。

 単純な足し算なら四人で倒せるだろうが、質量と一緒に力も数倍増したと考えるのが賢明だ。


「安全第一だ。距離をとってからアオイの護符で遠距離攻撃を」


 そう言ってリクが三人に下がるよう指示し、自身も下がろうとしたとき。

 突如、ビッグスライムの体がプルプルと大きく震え出した。


「なんかヤバイぞ、離れろ!」


 雰囲気に危険なものを感じ、リクが三人に命令して慌てて距離をとると、ビッグスライムは全身からいくつもの黒い液体を放った。


「うおっ! あっぶね」


 全員なんとか避けきったものの、すぐ近くに着弾した液体にリクは内心冷や汗をかく。


「うそ……地面が焼け焦げてる」


 ミカの視線の先、一番大きな水塊が落ちた場所を見ると、コンクリートがどす黒く変色しており、焼け溶けたような蒸気を立ち昇らせていた。


「絶対に当たるんじゃねぇぞ。たぶん強い酸かなんかだ」


 リクは警戒レベルを最大まで上げる。こんなものまともに浴びるだけで一発アウトだ。


「でも、あの中身全部が同じ液体だったら、攻撃したらモロに浴びるかもよ」


 ユイトの指摘通り、倒すためには攻撃しなければならないが、四人には物理攻撃しか手段がない。かといって、青髪少女が使った魔法のような術は使えない。対抗策としては、アオイの護符による遠距離攻撃しかない。


「武器の出し方も知らなかった人達が倒すのは無理ですね。お兄ちゃんよろしくです」


 雷撃以降ずっと見守っていた青髪少女が息を吐くと、空を見上げて声をかけた。


「──了解さ」


 すると周囲の建物に男性の声が反響し、黒い人影が近くのビルから飛び降りた。

 その衝撃的な光景に、見上げたアオイが口元に手を当てる。


 一方、リクが驚いていたのは男の行動より、シルエットが人型の狼──人狼の姿をしていたことだった。


「うおりゃ!」


 人狼は落下する勢いを乗せて、戦斧をビッグスライムに向かって投げつける。それが深く突き刺さると、斧の刺さった隙間から液体が噴水のように噴き出した。


「おい、ちょっと!」


 事態を悪化させた張本人に、リクは抗議の声を上げるが時すでに遅く。


 空中へと放たれた液体は、走っても逃げられないほどの広範囲に広がった。


「くっ……」


 重力に従って雨として落ちてくる死に、四人は覚悟するように両手で防御の姿勢をとる。

 浴びることは避けられないが、少しでもダメージを減らせれば生き残れるかもしれない。


 そんな一縷の望みに賭けて、堪えるように雨を待った四人の頭上一帯を。


「ヴォイド・ハウリング」


 人狼の言葉と共に、灼熱の業火が空間を包み込む。


 その爆発のような熱量に、上空を隙間なく埋めていた液体は一瞬で蒸発し、白い煙となって上昇気流に流され消えた。


「まだまださ! コア・ジール!」


 上を向いていた人狼が、今度はビッグスライムのほうに顔を向け、大きく息を吸い込み。口から尖った牙を覗かせながら、燃え盛る炎の球を撃ち出した。


「ピギィィィィィッ!」


 炎をまともに食らったビッグスライムは、業火に包まれ悶え波打ちながらリク達から遠ざかる。


 そしてどんどん体液を気化させ、焼けるような音と共に蒸気を上げ続け急激に縮んでいくと、最後には地面に染み込むように消えていった。

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