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第13話 リーダーの資格

「明確なゴールがあるなら、あとはそこを目指すだけだ。なら、やることはシンプルだな」


 目標が決まり、もやもやしていた気持ちが晴れたリクは、気分が高揚してくる。

 今までは何をすればいいのかわからず、後ろを振り返ることしかできなかった。しかしゴールがハッキリしたことで、ちゃんと前を向けるようになった。


「クエストを達成して結界を解く、って聞いたんだけど」

「その通りよ。無数にあるクエストの中の一つが、各区の結界を解く鍵になっているの。つまり全部で23、対応するクエストがあるということね。ただ、どれが鍵クエストになっているのかは誰にも判別できないわ」


 ウルマはユイトに応えつつ、頭を横に振る。


「頼まれて物を運んだり調査をしたり、空想妖魔ファンビルの除霊やダンジョン探索だってあるわ。当然、身の危険を感じる場面はいくつもあるはずよ」

「もしそれで、何か取り返しのつかないことになったら……」

「残酷なことを言うけれど、そのときはあなた達の家族や友人と同じことになるわね」


 アオイの不安に正直に答えたウルマの一言に、つい先程の光景がフラッシュバックし、リクの心は冷や汗を流す。

 石化した人達を助けようとする行為は、必然的に自分の身を危険に晒すことになる。好んで死地に赴きたいと思うのは少数派だろう。

 すべての結界を解くまでどれほどの時間と労力を費やし、いくつの死線を越えなくてはならないかも予測不可能だ。


「それでも、誰かがやらなきゃ何も変わらないし救われない。だろ?」


 しかしリクは、静かな決意を込めた眼差しで。


「俺は誰かが助けてくれるのをずっと待つほど気長じゃねぇし、自分でなんとかできることは自分の力で解決したい。それに自分の妹が待ってるんだ、兄である俺が助けてやらなきゃな」


 ウルマを真っ直ぐ見返しながら言いきった。

 現状は、仇討ちすら無理なレベルの力しか持っていない。だからこそ、想いを飲み込んでジェイクとルナに託したのだ。


 けれど自分の力で救うことができるのなら、もう迷いはなかった。


「私も、大切な親友を助けてあげたいです。そしてまた一緒におしゃべりしたり遊んだり、笑い合える日常を取り戻したいです」


 リクの言葉に同調するように、アオイも想いを口にする。リクの知っている彼女は、明るくはあるが物事に対しては受け身だった。そんなアオイが、自分から進んで意思を告げたことに驚きつつも、妹を想ってくれていることにリクは温かさを感じた。


「私も、不安を抱えながら待つなんて性に合わないわ。化け物を倒すのも楽しかったし」

「リアルRPGができるなんてこれっきりだろうしね。最大限に遊ばないと」


 ミカとユイトも白い歯を見せながら賛同する。あえて冗談っぽく言ったのは、巻き込む形で連れてきてしまったリクに対する気遣いだろう。そう思い、リクは心の中で感謝した。


「意志は決まっているみたいね」


 四人の言葉を聞き、ウルマは喜びと悲しみを同時に宿した瞳で微笑んだ。


「それなら、リーダーを決めてちょうだい。〝岐路の紋章〟を刻印するわ」

「岐路の紋章?」

「ここに来たということは、何かしらの選択をしたはずよ。誰かの前に選択肢が浮かんだ画面が出なかったかしら?」

「そういや俺の前に出てきたな」


 ウルマに聞かれ、リクは空想妖魔ファンビル達と対峙していたときのことを思い返す。


「あれは〝人生の岐路(フェイト)〟と言って、避けられない運命の選択を迫ってくるものよ。選択肢によって運命は変わるし、選ばないとクエストが失敗するか、最悪の運命に進むわ」

「マジか! あのとき選んでおいて本当に良かったぜ……」


 自分の選択は間違っていなかった。そのことに安堵し、リクは大きく息を吐いた。


「運命を決める者がパーティーリーダーとして紋章を刻むの。紋章がないと今後クエストは発生しないから、解放者リベレーターになるなら必須よ」


 この世界の終息を他人に任せるか自分で勝ち取るか。〝人生の岐路(フェイト)〟が出ているわけではないが、今はリーダーを選ぶ重要な局面になっているというわけだ。


「この四人でパーティーを組むのは決まりだろうけど、誰がリーダーになる?」


 ウルマの説明を聞き、ユイトがリーダー決めを議題に上げると。


「俺がリーダーになる」


 リクは迷うことなく、自ら名乗り出た。

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