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第17話 歴史的名作を思いながらの現実逃避

「これからどうするか」


 路地裏を早足に歩きながら俺は呟いた。ジギスムントがどれだけの糞野郎かはともかく、なるべく早く親衛隊のセーフハウスから遠ざかる必要があった。


 本当は、軍服にぶら下がっている十数個の勲章の正体を確認したかった。外套を発現させた星型の勲章がそうであったように、残りも遺産兵器(レガシー)の起動鍵の筈だ。今後の逃避行のことを考えると是非とも確認すべきだった。


 だが、今はそれどころではない。もし大きな音を立てて出現するタイプの遺産兵器を引き当ててしまった場合、逃げるどころではなくなってしまう。


 さて、これからどうするかと呟いたものの、実は作戦が一つだけあった。作戦というべき程のものでもないけれど――、


 そう、質屋を探すのだ。

 兎にも角にも、軍資金を確保しなくては。なんらかの軍司令官でもあるらしいジギスムントになってしまった俺が言うと分かりづらいが……。軍資金というか、まぁ、生活費を確保しようというワケだ。誰でも出来る発想かもしれないが、何の宛もなく逃げ回るよりはマシだろう。


 幸い、指に嵌っていた指輪達は高く売れそうだ。高価そうな宝石が幾つも埋まっている。盗まれたら嫌なのですべて軍服の内ポケットにしまっていた。他にも十数枚の金貨がある。


「価値は全然分からないが……」


 皇子が身につけている代物だし、それなりの現金にはなるだろう。

 ただ、あまり期待はしていない。どうせ質屋にぼられるに決まっている。俺は世間知らずだし、しかも通貨単位すら知らない。質屋に対抗しようがないぜ。せめて一年分の生活費になればいいなぁ。という感じだ。


 だが、落ち込んでばかりもいられない。

 敢えて前向きに事態を捉えてみようじゃないか。


 そう、物語だと思ってみようじゃないか。そうだな……、高貴な身分の人間が家出する系の話はどうだろうか。俺は男だが、今起きていることは『ローマの○日』みたいなものだと思いこんでみよう。今や銀河帝国の皇子だぜ。


「街並みも少しローマっぽいし」


 路地から大通りの様子を伺う。立ち並ぶ建物はすべて白と茶の石造りだった。THE・ヨーロッパだ。いや、違うかも。ヨーロッパは広いらしいからね。


 本当に西暦四〇〇〇年なのかよ、とは思ったけれど……。まぁ、二十一世紀のローマだって二十一世紀っぽくないからな。そういうこともあるんだろう。いっそのこと、この街をローマだと思い込もうじゃないか。なお、ローマの街並みはストリートビューで見た。


 うん、いいアイデアだ。これは『ローマの休○』だ。ここはローマっぽいし、ジギスムントは間違いなく王族だし――皇族だっけ?――、公務が嫌で脱走したのも同じだ。シチュエーションはぴったり当てはまる。そんで次は、恋の相手が現れるって展開だぜ! はっはっは! 


 はぁ……。

 現実逃避にも流石に飽きてきたので、裏路地からの観察を再開する。

 街を行く人々の服装は古めかしい。同時に画一的でもある。男はスーツかなにかで、女は長いスカート。全員がそうだった。


 なんとなく見覚えがある。二十世紀初頭の記録映像って感じ。マジで古めかしいぜ。


「うーむ、貧しいってことなのだろうか」


 ここの政府は何をしていやがる。市民の服が貧相なのは政治が悪いせいだろうな。

 つまりジギスムントが悪い。あいつが責任者なんだろ? 許せないぜ。殴ってやる。


 ジギスムントへの怒りはともかく、いつまでも路地をうろうろしているワケにもいかない。やむを得ないが、道を聞かねば始まらない。質屋にたどり着かねばどうにもならない。俺はこの星のこともこの街のことも知らないんだ。


 言葉は多分、通じるだろう。絶対に日本人ではないジギスムントやオルスラと会話出来ていたのだから。この身体になった時に、何か便利な機械を脳に埋め込まれたりしたんだろう。


 さあ行こう。勇気を持って。身を隠しながら、俺がジギスムントだとバレないようにしつつ、情報を集めるのだ。待ちゆく人々に完全に溶け込もむのだ。俺は大通りへと一歩踏み出し――、




 軽い衝撃を身体の横から感じる。

 何が起きたんだろうと思って周囲を確認する。




 足元に少女が倒れている。何故? 決まっている。俺にぶつかって転んだ。他に何がある。他人に迷惑を掛けるのは不本意ながら大得意だが、自らの行動由来でそれを行う日が来るとは思ってもみなかった。


「は……?」


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