柄杓
北斗七星を想い起こします。
長い尻尾をした丸桶め
おれは柄杓ってやつが たまらなく好きだ
疾く走る獣のなかには
あんな長い尻尾をはやしたやつもいるけど
どんなにけしかけてやっても あいつときたら
ちっとも走り出しやがらねえ
か細い尻尾に似合わねえねえほどの
でっけえ丸桶をつけてやがるとおもえば
汲んだら 汲んだ
溜めたら 溜めたぶんだけ
どっかに注ぎこんじまいやがって
あいつときたら たいてい
渇ききってさ すっからかん
しようのねえ やろうだぜ
だけどあいつのでっけえ丸桶は
まるで すくいあげる てのひらだ
水もれひとつない あいつの丸桶とくらべたら
おれの両手なんて 指をかたくとじたって
ざるみたいなもんさ
そんなのなんだか しゃくにさわるよな
だけど あいつの長い尻尾は
だれかに にぎられるのを待ってんだ
いくら かたくとじたところで
ざるみたいに水もれしちまう
おれの両手にならんだ指でも
おまえの尻尾ならにぎってやれる
にぎってほしいんだろ?
丸桶に水をたっぷり汲んで
長い尻尾を ぴんとのばして 待ってやがんだろ?
そんならなんだか かわいげもあるよな
だから おれはそんな柄杓が好きなんだ
長い尻尾をした丸桶め
おれは柄杓ってやつが たまらなく好きだ
天の河から、北斗七星の柄杓で星を掬うとか、いいかも!