見えない電車
こちらは百物語六十五話になります。
山ン本怪談百物語↓
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私の趣味は一人旅です。
これは、私がとある「秘境駅」へ訪れた時に体験したお話です。
東京都内にある「S駅」という無人駅を知っていますか。
ここは秘境駅として有名な駅で、周辺には山と川しかありません。
「しまった…まさかここまで秘境駅だったとは…」
S駅が気になって仕方がなかった私は、休日の朝から電車でS駅を訪れていました。周りをしばらく散策したり、無人販売所を巡ったりしていました。
気がつくともう時間は夕方。急いで電車に乗って家に帰ろうとしたのですが、S駅に止まってくれる電車はもうありませんでした…
「夕方の時点でこれかぁ」
途方に暮れた私は家族に電話をかけると、仕方なくS駅まで車で迎えに来てもらうことにしました。
「もう7時か…」
時間は夜の7時過ぎ。
周りに建物はないので、S駅の中は不気味なくらい静かでした。駅に設置されている電灯がなければ、私は闇の中で1人家族を待つことになっていたでしょう。
私はS駅の休憩所で大人しく家族の迎えを待っていました。
………プォォ…!
休憩所で煙草を吸っていると、遠くから電車の「汽笛」が聞こえてきた。
「あれ?一応電車は来るのか…」
おそらく、通過するだけの電車であろう。私は休憩所から外に出ると、線路の向こうを静かに見つめていた。
しかし…
「電車見えないなぁ。気のせいだったのかな」
線路の向こうには何もありません。街の小さな明かりが時々チラチラと見えているだけでした。気のせいで終われば良かったのですが…
ガタン…ゴトン…ガタン…ゴトン…
線路から振動が伝わり、どこかで電車が走っているような音が聞こえてきます。
「電車はどこだ…振動も音も…もうすぐ近くに…!?」
ブォォオオオオオオオオオンっっ!!
汽笛の音がすぐ近くから聞こえてくる。しかし、電車の姿は一向に見えてきません。
「どこだ?どこを走っているんだ!?」
思わず線路へ身を乗り出しながら、電車の姿を探そうとしたその時…
ガタンゴトンっ!ガタンゴトンっ!ガタンゴトンっ!ガタンゴトンっ!
私の目の前を「何か」が猛烈な勢いで通過していったのです。
強風と衝撃に驚いた私は、吹き飛ばされるように駅の床へ背中から倒れ込んでしまいました。
「な、なんだ今の…!?」
私は駅の床へ倒れ込んだまま、しばらく動くことができませんでした。数十分後、私は迎えに来た家族に助けてもらい、S駅を後にしました。
この駅で体験したことを家族に話してみましたが、誰も信じてはくれませんでした。
私が見たアレは、おそらく「電車」だと今でも思っています。
上手くは言えませんが、たぶん「私たち」が使っていい電車ではないと思うんです…
あの電車がどういう理由で線路の上を走っているのか、理由は全くわかりません。
しかし、姿のない透明な電車を、あの日の私は見てしまったのです。
本当に。
お久しぶりです、作者の山ン本です!
最近仕事が忙しい&体調不良でお話が書けない状態が続いておりました。
年末も色々と大変なことになりそうなので、12月は少しだけのんびりさせてもらいます。
一応クリスマスぐらいには新しいお話を出したいと考えているので、また次回もよろしくお願いします!