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プロローグ

初めまして、五條義晴です。

さまざまな芸術に触れるたび、自分の手で作りたいと考えてようやく行動に起こせました。

素人ですが、勉強しつつ書き続けていきますのでよろしくお願いいたします。

 生きとし生ける者全てにおいて、唯一抗う術がないとされるものーーそれは【寿命】。


 この世に生を受ける者は皆魂を授かり、同時に魂の寿命を刻みつけられる。


 その長さは、生命自身の選択や食事、遺伝ーー或いは生命自身を取り巻く環境で変わる。


 しかし、いつかは終わりが必ず訪れるという事実を、知恵ある者は既に知っている。

 終わった先に何が待ち受けるかは、誰も知らない。


 故に、地上に生きる生物は寿命の果てを見据え、本能的に何かを為していこうと行動を起こす。


 寿命とはまさしく、命の砂時計。


 その上部に溜まった砂が空になるまでの限られた時を、命ある者は思うがままに過ごす。


 中には、寿命を少しでも引き伸ばさんとして、試行錯誤を繰り返す者も少なくない。


 ……それら全てが徒労に終わるとしても。


 どれほど滋養強壮に優れた料理を食べ続けたとしても。

 溢れる財や愛に囲まれた幸福を感じたとしても。

 死をもたらす凡ゆるリスクを避けたり、人里離れた場所で天涯孤独に過ごしたとしても。


 あらゆる手段を試す内に、幾らか死期は前後するのかもしれない。


 しかし、生命に必ず訪れる、寿命。


 この絶対的な終末に対して、命ある者全てが不帰の客とならざるを得ない。


 それが、理というものである。





 ーーしかし、寿命とは違った終わり方が存在する。


 それは、【死期】。


 一般的な意味として、寿命が魂の存在限界による自然死ならば、死期とは運命の悪戯による回避不能の死に近いニュアンスだ。


 言い換えれば、明日も生きるはずだった生物が、原因不明の完全犯罪に見舞われたようなものだろうか。


 ……ならば、死期をもたらすのは誰か?


 生物の中でも突出した知恵を持つ『人間』ーー彼らが例える、『神』が妥当だろうか。


 命を生み出し、魂を宿し、終わりを刻む。

 この一連の流れを実行し得るのは、確かに『神』と呼べる外の理の力に他ないだろう。


 勿論、証明する手段はない。


 神がどうたらこうたらと不明確な話だ。

 ここで「ありえない」と一蹴する無神論者達は、時間の無駄だと吐き捨て、踵を返して別の議論に進むべきだ。


 そもそも寿命と死期の違いなど、妄想の域を出ない。

「似ているが違う」の一言で片付ければいいものであり、そもそも論点がどうでもいいと揶揄されるテーマである。

 科学的に証明されて初めて、注目を浴びる類の問題だからだ。


 ……しかし、それだと実に面白くない。


 ありきたりな話だが、『生物の上位に君臨する謎の存在がいて、それが行使する未知の力によって世界が成り立っている』と仮定する方が、よっぽどロマンに溢れている。


 とすると、魂の終わりは全て、神の力の範疇で定められたもの。


 寿命は、その魂魄と身体の限界に応じた神の采配。

 死期は、意図して終わりがもたらされる神の悪戯


 ここまで深掘りすると、もはやどちらでもいいと思うが。


 ただどちらにしても、その神との直接的にコンタクトを取らなければ、地上の生物に抗う術はない。





 ーー前書きはこのくらいにして。


 今後語られる舞台では、死期が付き纏う。


 不幸ゆえか、消極的・否定的思考ゆえか。

 人々が生み出す『陰』の気に誘われた死神が、さながら悪戯好きな妖精のように運命へと干渉する。


 定期的に耳に届く原因不明の死は、現世では怪死事件として人々に恐れられていた。


 そんな自由奔放かつ傍若無人な死神が、ただの人間の子供へ関わることによって、逆に振り回されることになろうとは、神さえも想像しないことだった。




 ーーコバルト大陸中東、中立都市ウルフェン。


 上空には竜、森には精霊。

 広大な地上は魔法に満ち溢れている。


 地上のあらゆる種族が、夢や目的、欲望といった理想を魔法で実現させることができる世界。


「この星には万物が有る」などと大袈裟に伝わる詩の一節も、あながち間違いと言い切れない。


 そんな都市の一角、上流階級の人間が住む住居区に、なんとも見窄らしい姿の少年が養子に引き取られた。


 ……今思えば。


 神はなぜ、少年の心に宿る野心に気づかなかったのだろう。


 世界は、そんな少年の理不尽極まりない運命を中心に、激動の時代を迎えつつあるのだった。




 

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