表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

泊さん 1


 事故物件──と呼ばれる物件を御存知ですか?


 御存知ですか、そーですか。


 実は…だけの話なんですけどね、お客さん!


 これ、誰にも言ったら駄目ですよ?


 お口チャックでお願いしますよ、お客さん!


 他言無用って事ですよ、わかってますよね?


 大人の優しさを掻き集めて、約束は守ってくださいよ、お客さん!


 実はですね……事故物件って──、2週間程…誰かが寝泊まりすれば、普通の物件として売り出しする事が出来ちゃうんですよ!


 でね、本来は業者の新人社員が2週間だけ事故物件の部屋に寝泊まりするんですけど、これが精神的につらくて、か〜な〜り堪えるらしいんです。


 で──、新人社員が音信不通になってしまったり、入院したり、退職してしまったりするらしくて、業者は困るわけですよ。


 そんなわけで新しく始まったビジネスが「 とまりさん 」なんですねぇ〜〜。


 この「 とまりさん 」は業者からの依頼を受けて、事故物件の部屋に2週間だけ寝泊まりしてくれるんです。


 2週間の寝泊まりに支払われる報酬額は約20万 〜 50万程としょう(しょう)お高くなっていますが、業者さんからすればガネらしいです。


 実際には50万以上も支払われる事故物件もあるらしく、相当ヤバい雰囲気を醸し出している事故物件らしいですよ。


 そんな高額な依頼を請け負う「 とまりさん 」なんてないと思われるでしょうけど、るんですよねぇ!


 実は…「 とまりさん 」には、強者な「 とまりさん 」が多いんです。


 たったの2週間の寝泊まりで50万以上の報酬がふところにポンポンと入ってるんですから、簡単にめれるわけがないんです。


 「 とまりさん 」は、お金に目が眩んだ元ニートどもなんですよ!!


 つい3年前にも若くして「 とまりさん 」となったニートがました。


 「 とまりさん 」としてはペーペーの新米さんですけど、なかなかガッツのある方でした。


 なんでも、両親と叔母と自分の葬式代や墓石に掘る名前代,伯父が作った借金を返済する為のお金を稼ぐのが目的だったらしいです。


 偉いですよねぇ、ニートなのに……。


 伯父は借金を作るだけ作って押し付けたあと、失踪してしまったそうです。


 どうやら伯父の職業も「 とまりさん 」だったそうですよ。


 押し付けた借金を返済する為に「 とまりさん 」をしていたのでしょうかねぇ……。


 そんな事は横に置いときましょう。


 3年前に「 とまりさん 」となった彼は、もう「 とまりさん 」をしていません。


 お金が貯まったから「 とまりさん 」をめたと思われますか?


 いやいや、それが違うんですよ。


 実はね、彼の身に不可解な事が起きたんです。


 お祓い…ちゃんとしてもらってたんでしょうかねぇ?


 例え気休めでも、お祓いはした方がいと思いますよ。


 気持ち的にもね。











──*──*──*── 3年前


 オレは「 とまりさん 」をしているトミヤと言う。


 トミヤは苗字だ。


 今回、オレは先輩の「 とまりさん 」のヘルプでている。


 高級マンションの1室が先輩の請け負った事故物件だ。


 先輩の請け負った事故物件の報酬額はなんと80万円!


 オレは先輩のヘルプをするだけで30万円も貰える事になっている。


 カネには先輩って有名なのに、ヘルプを雇って30万もくれるなんて随分と太っ腹だよな…。


 オレは緊張している所為で生唾をゴクリ,ゴクリ…と飲み込みながら、事故物件のインターフォンを押した。


 インターフォンが鳴ると、ドアが開き、先輩が顔を出した。


 先輩…だよな??


「 こんちゃス、先輩。

  トミヤです。

  ヘルプにました 」

「 あぁ……ヘルプの…待ってたよ…。

  いらっしゃい…入って… 」


 先輩はやつれた顔をしていて、かすれて声でオレに話かけてる。


 先輩はガリガリのほっそい腕を伸ばして、オレに向かって手招きしてくれる。


 おぃおぃ…先輩、大丈夫かよ…。


「 …………あの…先輩…大丈夫ですか?

  病院に行った方がいいんじゃないッスかね?

  オレ…先輩が戻ってるまで留守番しとくんで、病院に行っててくださいよ。

  徒歩10分ぐらいの場所にデカい総合病院がありますよね 」

「 …………お前…い奴だな…。

  …………やっぱめとくわ…。

  ほかの奴にする…。

  お前…帰れ…… 」

「 はぁぁぁ?!

  なに言い出すんスか、先輩!

  今にもブッ倒れそうなヤバい顔色しといて!!

  病死したいんスか!?

  オレ、帰りませんよ!

  30万なんて要らないッスから、病院に行ってくださいよ!

  電話借りますよ、救急車、呼びますから!! 」


 オレは今にも倒れそうな先輩が心配になって、強引にドアを開けたら、靴を脱ぎ捨てて部屋に上がった。


 電話を見付けて、119に掛けたら救急車を呼んだ。


「 これでし!

  先輩──、救急車、てくれますからね! 」

「 お前は……馬鹿かよっ!!

  なんで…なんで……入ってたんだよ…。

  帰れって……言ったのに…………馬鹿野郎… 」

「 そんな死にそうな顔してなに言ってんすか?

  ほら、床なんかに座らないでソファーに座ってくださいよ 」


 か涙を流しながら、なげいている先輩に手を差し伸べてソファーに座らせる。


 部屋の中を見回してみたが、実にい部屋じゃないか。


 流石は高級マンションの1室なだけはある。


 こんなすげぇ部屋で過ごせるなんて最高の御褒美じゃないかよ。


 これならバスタブにジャグジーでも付いてそうだな。


 顔色が悪い先輩にはソファーに座ってもらっといて、オレは部屋の中を見て回った。


 いねぇ〜〜〜、高級マンション!!


 カネを貰えて寝泊まりするだけなんて、マジで役得だわぁ〜〜〜。


 暫くすると救急車が高級マンションの前に停まった音がした。


 もうぐ救急隊員がてくれる。


「 先輩、ちゃんと診察とか検査とか受けてくださいよ。

  報酬を貰ったら、先輩に渡しに行きますから、入院代とか診察代とか検査代とかに使ってくださいよ 」

「 トミヤ……済まない……ほんに…済まない……許してくれ……。

  オレを…恨んでくれてもいい……。

  報酬は全額…お前にやるから……生きて…生き残ってくれよぉ…… 」

「 せ…先輩ぃ〜〜?

  急にどうしちゃったんスか?

  いや…マジで…… 」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ