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第一章 身の程知らず 〜3〜


「ま、魔物だー!」



リリアと出会った喜びに浸っていると、村人の叫び声が聞こえ、こちら側に逃げてくる。

リリアは反射的にその村人の近くまで物凄いスピードで駆け寄る。

は、速っ!俺も急いで追いかける。


「何があったの?」


「ひぃ!あ、あんた誰だ!?」


「そんな事はどうでもいいから!魔物が出たんでしょ!何処にいるの?」


ふぅ、やっと追いついた。


「こ、この人は冒険者だ!事情を説明して!」


「あ、う、む、村の裏!村の裏手側の森からゴブリンが!群れで襲って来てる!今はダカンさんとお前の親が井戸の近くで戦ってる!」


「アルベル!」


「うん!遅いかもしんないけど先導する!」


すぐに俺達は村の裏手側に向かって走り出した。

走っている最中に昨日の村に現れたゴブリンの事を思い出す。

あの一匹だけで苦戦したのに今度は群れで?

俺1人では確実に殺されているだろう。

先に戦っている3人も心配だが、でも今はリリアがいる。

リリアが加勢に加わればなんとかなると思いたい!


そんなリリアに目をやると、走る彼女の胸部パーツは震度5弱を観測していた。



「井戸はどの辺?」


「けしからん!」


「ん?」


「あ、いや井戸ね!あぁ、も、もうすぐだ!丁度あの家の裏側が井戸!」


大体の方角を指差すとリリアはギアを上げた。


「先に行くね!」


やはり速い。リリアは一足先に井戸に向かっていった。


遅れる事十数秒。俺も井戸に到着するとダカンさんが負傷し倒れていた。

俺の両親はどちらも肩で息をしていて立っているのもやっとだった。どうやらマナ切れを起こしているようだ。


「父さん!母さん!」


「あ、アルベル!?どうしてあなたがここに!?」



(ドゴッ!)


鈍い大きな音の先を見ると、棍棒を構えたリリアの足元にはゴブリン達が何体も倒れていた。



「アルベル!そこの倒れている人の治療をお願い!」


こっちを見もせず構えを解かないリリア。リリアの見据えている先にはまだ十数体のゴブリンと、他より一回り以上大きいゴブリンが1体いた。


「分かった!ダカンさん大丈夫!?『リトルヒール』」

(パァー)

「ぐ、あ、アルベル。あ、あの娘はなんだ?とんでもなく強いぞ!」


(ドゴッ!バキッ!ドゴッ!)


リリアはまた更にゴブリンを何体もぶっ飛ばしていらっしゃる。


た、確かにとんでもなく強い。こんなに強いなんて。


ちなみに俺の"アプレイザルアイ"は魔物のレア度も鑑別する。

昨日村に現れた奴は☆1で、今リリアの足元に倒れている奴等は☆2、群れの主であろうデカい奴は☆3だ。


この世界にレベルという概念があるとするなら、両親やダカンさんは☆2と3とは言え歴戦の冒険者だった。つまり低レアでも高レベルのはずだ。

ただリリアは修練してたとは言え、つい最近冒険者を始めたばかり。

きっと高レアで低レベルなんだと思うが、既に3人より圧倒的に強い。

☆2と3は固有スキルの有無位しか違いはなかったが、☆5は別格だ。



(ズーン)

そんなこんな考えてたら、ゴブリン群れの主であろう一際大きい☆3のゴブリンもぶっ倒れていた。


「ふぅ、これで終わりかな。どう?私強いでしょ?」


軽く返り血を浴びたリリアは、棍棒を肩に乗せエッヘンと少女のような笑顔でこちらを見ている。

その姿は俺がイメージしていた物語に出てくる"勇者"そのものだった。


俺は自然とリリアの元に歩を進めていた。


「どうか私を冒険に連れて行って下さい。」


気づいたら"奇行を繰り返す村人"は"勇者"に跪きながら同行を懇願していた。



「え?ちょ、ちょ、ちょっと立ってよ!もう!そういう事はしないで!こちらこそよろしくね!」


リリアは顔を赤らめ俺の事を立たせながら言った。

この時に決めたんだ。

俺はリリアを世界一の英雄にしてみせる!



その後、ゴブリン達が襲って来た事による諸々の後処理を村総出で済ませていった。

幸い被害はほぼ0だ。

リリアと村から旅に出る事に対して両親は反対しなかった。

いつまでも冒険に出る事を目指している息子がヤケになって1人旅を始めるよりも、とんでもなく強い美少女と旅に出る方がよっぽど安心という事なのだろう。


こうして旅に出る事となり、道中☆3の魔物とも遭遇したのだが、リリアは全くものともせず倒していった。


「アルベルが言った通り私は剣の方が性に合ってるみたい」


俺は村を出る際ダカンさんの使ってなかった銅製の剣を貰いリリアに渡していた。

リリアの構えや棍棒の持ち方はまんま剣術に当てはめられる気がしたからだが、これが見事にハマった。

ただし、剣術を6年間"かじった"程度の俺から見てもリリアはとても動きに無駄が多いので、適宜アドバイスをしていった。


「すごい…私、アルベルと出会ってからドンドン強くなってるよ!」



こうして強さの勢いが加速していくリリアと全く成長しない俺は、特になんの苦労もなくザクレンに着いた。


道中の魔物達を倒しまくっていたので、その魔物達の毛皮やら牙やらを売ると、かなりの額になった。

そのお金を持ってまずは防具屋に直行した。

リリアの革の鎧は中古でサイズが合っていない。

しかもリリアは攻撃力が高く身のこなしも素速いから、鎧よりももう少し軽装の方が良い。

RPGのジョブでいうなら戦士よりも剣士って方が合っている。

とりあえずリリアには強化された布で編まれたシャツやジャケット、スカート、それに肩当てや篭手を着けてもらう。


(シャッ)

「ねぇ、アルベル。どうかな?似合ってる?」


「……良い。」


軽装の方が身体のラインがしっかり見えるよね。

…いや、あれだ。別にエロい意味じゃなくてね。あの、あれだ。サポーターとしての。その、あれのあれがそれなのだ。


「この装備とっても動き易いよ!これでまた私強くなれるかな?」


「うん、リリアは伸び代半端ないからまだまだ強くなるよ」


「エヘっ、本当アルベルは私より私の事分かってるみたいね!」


うん。性能面、見た目全てにおいてこれで決まりだ。


装備が整ったので次はいよいよギルドで冒険者登録をしに行く。


この世界でのギルドは、クエストの依頼があり、依頼を達成するとお金やアイテムを貰える。

またパーティーの募集や加入もできる。

そして冒険者には等級が与えられる。

等級はクエストをクリアした数や難易度によって昇格されていく。

登録したばかりだと白等級。次に黄、青、赤、黒、銅、銀、金、プラチナという順に上がっていき、最高ランクはダイヤ等級となっている。

この等級は世界中のギルドで共有されており、等級が高ければ優先的に報酬の良い高難度クエストを依頼される。



うん。

ヒネリの少ないとってもありがちな設定だ。分かりやすくて助かる。


とりあえず登録を済ませて、パーティーメンバー募集の貼り紙を見てみる事にする。


ん?

おお!


これは凄い!貼り紙を見ただけでそのパーティーメンバー全員の☆の数が分かるぞ。アプレイザルアイにこんな作用があったとは!

とりあえず☆3以上の人はいないみたいだな。

このアプレイザルアイがあるんだから☆の数が高い人…

なんならうちのパーティーは全員☆5で揃えよう!

それまではリリアと2人でも簡単なクエストなら全然やっていけるだろう。


「ねぇ?どこかのパーティーに入るの

?」


不安気な顔でリリアが聞いてくる。


「いや、とりあえずはこのまま2人で行こうと思う。リリアには負担掛けるけどそれでもいいかな?」


「うん!私もその方が良いと思う!」


満面の笑みで答えるリリア。

なんだこの可愛い生き物は。


まぁ下手に仲間を増やしてリリアがトドメを刺す機会が減っても困るし。

とりあえずはもっと強さに磨きをかけていこう。


こうして正式に冒険者となった俺達2人は、ベテランの冒険者でも大半は黒等級や銅等級であるにも係わらず、1ヶ月程で金等級に昇格していった。


リリアの強さも順調に成長していき、今やその強さと美しい金色の髪から「金獅子の戦乙女」という二つ名で呼ばれるようになっていた。


ちなみに相変わらず俺の強さは殆ど成長はしていないが、二つ名はついた。


「従者」だ。


うん。二つ名っていうか役職だね。


戦乙女と従者はいくつものクエストをクリアしていき、更に一度だけ古代遺跡に挑戦しクリアした。


古代遺跡とは、凄まじく有能なアイテム

が手に入る代わりに遺跡内の魔物は強く罠や謎解きの要素が多い為、生きて帰って来れない事も珍しくはないダンジョンだ。


しかしそこは強さのリリアと、前世でゲーマーだった知識を活かした俺が力を合わせてなんとか2人だけで遺跡をクリアした。

その戦利品の中に俺にピッタリの装備があり現在愛用している。


「隠匿のローブ」。

俺はこれをそう呼んでいる。このローブを着ている事で自分の存在を限りなく薄くする事ができ、敵から狙われなくなる。サポーターとして動くには最適だった。


とまぁかなり順調にきている風に語ったが、多少の問題も発生している。

至極単純。

俺が戦力にならないので、そろそろリリア1人で戦うには少々キツくなってきているのだ。

古代遺跡では☆3の魔物が群れをなして現れ、遺跡のボスは☆4だった。さすがのリリアでも1人では少し苦戦していた。


「大丈夫よ!今回だって乗り切れたし!」


リリアはそう言うが、物理攻撃が効きづらい魔物、空を飛んでいて攻撃が当てづらい魔物、遠距離攻撃が多彩な魔物等リリアと相性が悪い敵が出始めている。

今の所力押しでなんとかなってはいるが、より確実に勝つ為にはパーティーを組む事が必要だ。


そして、俺の見込み通りならそろそろ予想した展開が…


「『金獅子の戦乙女とその従者』ってのはお前らの事かい?」


ほらやっぱり!

☆5の冒険者が話し掛けてきた!





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