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第一章 身の程知らず 〜2〜

【転生前の回想】



会場を埋め尽くす大観衆。

観衆が注目しているのは、舞台上で照明に照らされながらVRマシンをつけ、操縦桿を操作している男達。

大画面スクリーンにはVR内の戦いの様子が大きく映し出されている。


試合のクライマックスが近づき実況に熱が入る。

「なんと!世界ランク3位のチームヒシャカクのエースtomitaが3人続けて相手をクラッシュしている!

そのままソロランク1位のDaibitデイビットまでもシュート!そしてクラーーッシュ!

そして、ここで試合終了!!

今回のアーマードウォーズ世界大会の優勝者は、チーム・ヒシャカクだー!」


結果を派手に伝え会場のボルテージは最高潮に達する。


「ふぅ。」


世界大会が終わった。

VR機器を外し目の前に華やかな光景と喜ぶ仲間達を観て優勝した実感が湧いてきた。

俺は三原貴之。

このアーマードウォーズという5対5

のチームバトルゲームのプロチーム「ヒシャカク」に入って3年目。今まさに初優勝を飾った所だ。

ちなみにゲームでの登録名は「うどん」だ。特に意味はない。



「そしてなんと!今大会の全ての個人賞もチーム・ヒシャカクの独壇場だぁ!

最多アシスト賞にタコ8!最多撃墜賞にtomita!最多オブジェクト破壊賞にチャン助!

そしてMVPは、アシスト・撃墜・オブジェクト破壊全てトップクラスのカワザルだ!」


実況が興奮しながらアナウンスする。会場も盛り上がる。

うん、俺以外のみんなが賞を取れた。良かった、良かった。


「更に!チームヒシャカクはうどん選手以外全員アシスト数と撃墜数が10以上のハイアベレージ!」


うん、実況さん。俺以外とか言う必要なくない?別にいいんだけどさ。



表彰式も終わり、控室に帰ってくるとチームのみんなも興奮冷めやまぬ状態だった。


「まさかここまで登り詰められるとはな!」

「3年前は日本国内でも10〜5位辺りを彷徨ってた俺らがまさか世界優勝するとはな」

「だな!それもこれも三原、お前のお陰だよ!ありがとな!」


「いやいや、みんなの才能あってこそだろ。俺、ちょっとトイレ行ってくるわ」


チームの奴らは良い奴らだ。俺だけアシストも撃墜もほとんど取ってないってのに勝つ度にこんな感じの事を言ってくれる。

実際試合中は試合全体の流れを読んで、みんなに指示出しつつサポートに徹しているつもりだ。

派手さはないけど、格好良く言うなら玄人向けのいぶし銀なプレイをしてるって感じかな。



「実際うどんさんてどう思う?」


ん?トイレの前で俺の話してるあれは、うちのチームの補欠選手2人だ。

自分の陰口を言われてるかもしれないと思い、何故か咄嗟に隠れてしまった。


「ぶっちゃけあの人試合中何してるかよく分かんないんだよね。」

「それな。今大会で撃墜0ってうどんさんだけだぞ!なんでスタメンになってるか分かんねーよ!俺だってあの試合でてたら優勝チームメンバーとして名前が残ったのになぁ」

「確かにうどんさんて別にアシストいっぱいとってるわけでもないもんな。スタメンの人達がよく言ううどんさんのお陰ってのが意味わからん」

「あぁ、それって3年前うどんさんがチームに入った時にチーム全員に対してプレイに関するアドバイスをしたんだって。そしたらそこからどんどん順位を上げていったらしいよ。それを恩に感じてるってことじゃないかな?」

「そうなんだ…うーん、まぁすげぇけど。それってじゃあコーチで良くね?」

「だな。別にスタメンとしてプレイヤーになる必要はないよな」


あらま、随分好き勝手言ってくれるじゃない。

まぁ、正直その通りだなって感じは前々からしてたけどさ。最近入ったばかりの補欠選手とはいえチームメイトからのこういうのは結構応えるな。


「おい!三原!こんな所で何してんだよ!トイレじゃなかったのか?この後の打ち上げなんだけど」


あらま、こりゃまたタイミング悪くMVPのカワザルこと川田くんのお出ましだ。


「え?うどんさん!?」


補欠達の顔が引きつりまくってる。


「ああ、俺は今日は体調悪いし打ち上げの参加は止めとくよ」


じゃないとこの補欠達が打ち上げ来なくなるだろうし、俺一人行かない方が良いだろう。


「おいおい、世界優勝した日の打ち上げだぞ?これはお前のお陰…」


「勘弁してくれ。本当に体調悪いんだって。それに今日の打ち上げってスポンサーとかよく分かんない関係者とか来るんだろ?元々そういうの苦手だし。

大丈夫、また別日に俺らだけで打ち上げしよ」


「そうか…」


「うん!」


優勝したその日に体調悪いってのは無理があったか。まぁ、色々よく分かんない人が集まるパーティーが苦手なのは本当だし。


とりあえずホテルまで近いし、気晴らしに歩いて帰るか。

ついでに陰口言ってくれてたあいつらが強くなるような改善点でもメモってやるか。

俺って人間できてるなぁ。







ん?あれ?なんだこの感覚?

無重力の中にいるような。

真っ暗だ。


「……さい。……め…さい」


何か聞こえる気がする。


「目覚め……さい。目覚めなさい。目覚めなさい。」



ん?

なんだ?真っ白な異空間に俺は浮いている。


「貴方は現世で一度死に、新たな生を別の世界で生きる事になりました。」


へ?一度死んだ?別の世界で?

パニックになりつつも、なんだか少しずつ思い出してきた。

スマホにメモを残しながら歩いて帰ったもんだから信号無視したトラックに気付かず轢かれた。ありゃ即死だ。

ながらスマホはやっぱり駄目だね。


「私は、女神フレイアル。貴方に新たな世界を生きるための祝福を2つ授けます」


そしてこっちの返答も待たずにどんどん話を進める、この羽根の生えた半裸の女巨人は女神と自称している。


んー。つまりラノベよろしく、死んで異世界転生する前って事か。

祝福ってのは、つまりチートスキルなんだろうな。

トラック。女神がくれるチートスキル。そして俺に家族はいない。

なんともまぁ、テンプレ通りなもんだ。


「さぁこの中から2つ選ぶのです」


ザッと何十個もある単語が目の前に突然浮かぶ。

この中から好きなチートスキルを選ぶってわけか。


"バーニングロール"、"ジャスティスドライブ"。


色々な単語があるがイマイチどういう内容なのか分からない。


「どういう内容なのかって分からないですか?」


「・・・・・・・」


「おーい!」


「・・・・・・・」


女神はずっと微笑み何も喋らない。

なるほど。話通じないパターンね。


そうしたら名前の感じで決めるしかないのか…うーん…

祝福って位だからとんでもないハズレはないんだろうけど…

これは悩むなぁ…

お!この''アプレイザルアイ"ってアプレイザルは確か鑑定とか査定みたいな意味でアイって事は鑑定眼的な事だよな。

多分これ対象のステータスとか見れる的なヤツでしょ!

やっぱり異世界転生物と言えばこれは必須スキルだよな。


世界優勝したその日に突然死んで、かなりショックだったし、悲しかった。

家族は元々いないけど、チームのメンバーとの別れもできなかったからな。

とはいえ正直…

今は転生する事に完全にワクワクしてきてるな。

こうなったら気持ち切り替えて、転生した世界でも世界一の英雄を目指してみるか!

そんでもってあと1つのスキルは…


「残り30秒で決まらないようならこちらが勝手に決めますね」


「え!?」


女神は微笑んでいる。


「いや、ちょっと待ってよ!そんな時間制限あるなら最初から言ってくれよ!この何十個もある単語から30秒で選べだなんて…」


俺のクレームに対して女神はただただ微笑んでいる。


「ふーー。」


一旦冷静に、冷静になるんだ。

ここでただ喚いてもしょうがない。

さっき自分が考えた通り、多分この中に大ハズレなスキルはないはず。


「残り20秒」


そしてさっきの"アプレイザル"みたいな想像しやすい名前のスキルを選べば良いんだ。

となると……この"インフィニティマナ"ってのはどうだろう。

インフィニティ=無限と、マナはRPGで良く使われる魔法の元素みたいな事だろう。

せっかく異世界行くなら魔法使ってみたいしこれは良いかも。


「残り10秒、9、8、7、6」


将棋みてーなカウントダウンだな。

まぁ結局悩んでも、殆ど中身分かんないだからこれで決まりだ。


「決まったよ。それじゃ"アプレイザルアイ"と"インフィニティマナ"で!」


「………」


女神はただただ微笑んでいる。


「……え?嘘!?もしかして話通じなくて勝手にスキル決められる感じ!?それじゃさっきまでの考える時間なん…」


「アプレイザルアイとインフィニティマナですね。分かりました。」


「通じてんのか!紛らわしい間!!」



「それでは新たな世界で強く生きてください」


はぁー。まぁとにかくここから異世界転生が始まるんだな!


辺りの空間が歪んで意識も朦朧としてきた。




そして俺は、グルンド村のアルベルとして異世界転生をした。



転生して、すぐに知る事になったが"アプレイザルアイ"は対象のステータスやら何やらが見える万能鑑定眼ではなかった。

このスキルで見れるものは、その対象のレア度だった。


レア度は対象の頭の上に空白の5個の☆が浮かんでいて、その☆が幾つ黄色で埋まっているかで判断する。

つまりは☆5が最高であるって事だ。

そうソシャゲでお馴染みのあの☆である。


村の人達はその殆どが☆0〜1。元冒険者だった両親は☆2。ダカンさんは☆3だった。

☆3のダカンさんを見た時に気づいた事だが、この鑑定眼はレア度の他にその対象の固有スキルとスキルの説明文も見えるようだ。

ダカンさんにしか固有スキルはないので現時点では、☆3以上の人に固有スキルはないと仮定している。

ちなみにダカンさんの固有スキルは"踏ん張り"といって敵からのダメージを少しだけ軽減するというものらしい。


そして、このアプレイザルアイでは自分のレア度は分からない。


まぁ、マナが尽きない代償にそれ以外の能力が殆ど成長しない"インフィニティマナ"に、

レア度と固有スキルだけ分かる"アプレイザルアイ"というポンコツスキルを所持した自分の☆の数は分からなくて良かったかも。



そんなポンコツな俺の目の前に今☆5のリリアが冒険に誘ってくれている!

それにしても☆5は凄い。☆が黄色じゃなく虹色に輝いている。

固有スキルは敵にトドメを刺す毎に恒久的に上限なく攻撃力が少しずつ上昇する"エンドレスフィニッシャー"。

つまりトドメを刺していけば際限なくドンドン強くなるという、時間はかかるがとんでもない成長ブースターだ。


そんなリリアとの出会いの最中、またしても村に魔物が現れた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 転生してこれから話がどうなっていくか楽しみです。 スキルやら成長がこれからどんどん増えていって面白くなりそうです!! [気になる点] マナが枯渇しないスキル<インフィニティマナ>が今後の話…
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