殺人鬼ダウマン
「もう食えねえのか? しょうがねぇなぁ、手伝ってやるよ」
「んん、んんんんん!」
「食べすぎて喋れなくなったのか、バカだなぁ! わははは! ほら、こっちによこせ」
「んんんんんんんんんん!」
どうも貧乏性で食べ放題の店に来ると動けなくなるまで食べてしまう。いつものように先輩に介抱してもらいながら家まで送ってもらった。
「すいません、いつも僕ばっかり飲んじゃって。いつも先輩に運転させちゃって」
「気にすんなよ、かわいい後輩に腹いっぱいになってもらえて俺は幸せだよ」
先輩とは小学生の頃からの付き合いで、もう20年は一緒にいる。家も職場もかなり離れているが、こうしてたまに会っている。
「それにしても秀司、お前本当に変わったよなぁ。昔暴走族だったやつが今や一流企業で働いて結婚もしてるんだもんな」
「頑張りましたからね」
高校の頃暴走族に入ってはいたが、なんとなく先輩にくっついていただけで、金髪にもしてないし特に暴走もしてない。
「ところで先輩⋯⋯」
「ん、なんだ?」
「ダウマンの話、知ってますか?」
「知らねえ訳ねえだろ、こんだけ世間を騒がせてる殺人鬼だ、誰だって知ってるさ」
近頃ダウマンという人物による殺人事件が多数発生しているのだ。犯人は分かっているのに捕まらない、ドラマなんかでよくある話だ。
「なんで急にダウマンの話なんか」
「とぼけないでくださいよ。分かってるでしょ」
「⋯⋯⋯⋯」
「先輩!」
「⋯⋯ごめんな、もう帰るわ。お前も早く家に入れよ、風邪引くぞ」
殺人鬼ダウマン。石を使ったあらゆる方法で人を殺しているらしい。割った石で皮膚を切り裂いたり、目玉をくり抜いて代わりに小石を入れたり、石で歯を磨いたり、石を無理矢理飲ませたりもしている。
僕は、この殺し方を見たことがある。先輩だ。七年前に先輩は酔った勢いで、このやり方で当時付き合っていた女性を殺している。「人を殺した」と聞かされ、呼び出された僕は先輩と一緒に遺体を山に埋めた。つまり僕も犯罪者だ。死体遺棄の犯人だ。
今起きている連続殺人事件とあの事件はとても似ている。いや、同じと言ってもいい。先輩がまた人を殺したのではないかと、心配だった。勇気を出して聞いてみたが逃げられてしまった⋯⋯。
「秀ちゃん大丈夫? なにか悩み事?」
妻の美代子が聞いてきたが、こんなこと言えるわけがない。
「大丈夫、ちょっと飲みすぎただけだよ。もう寝るね、おやすみ」
「そう、なら良かった。おやすみ」




