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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第拾参話 紅染まる
99/130

第拾参話 伍

 木の間(きのま)で準備の続きをしていると、(つかさ)君の事が気になって、手に付かなくなってしまう。(つかさ)君を水の間(みずのま)に運んで三十分後、シキが木の間(きのま)に来てくれた。


『今日はもう帰りなさい。外はもう暗い』

(つかさ)は、泊まるんだろ? 着替えとか必要だよな」

呪詛祓(じゅそばら)いには、一晩以上かかりますからね。本日、(つかさ)のお父上は出張ですか?』

「先月からイギリスらしい。帰ってくるのは来月末みたいだ」


 シキの云う通り辺りはもう真っ暗。それに、帰らないと心配される時間。


「響希君。今日はもう帰ろう」

「わかってる。でも、(つかさ)がこんな事になっているんだ。シキ。帰って、着替えとか持ってくる」

『わかりました。必ず、黒牙(こくが)とともに来てください』


 荷物をまとめて、響希君、黒牙、白牙(びゃくが)とともに紅蓮荘を出る。


「じゃあね。斑牙(はんが)(つかさ)君の側に居てあげてね」

『はい。響希殿も、華鈴殿もお気を付けて』


 ***


 真っ暗で足元が見えない。幾度となく転びそうになってしまう。

 響希君も時々、(つまず)きそうになっているようだ。


「大丈夫か?」

「うん。平気だよ。ありがとう」

「ちょっと待ってろ。スマホのライトで……」


 響希君のスマホのライトで照らされた遊歩道は、いつもと同じはずなのに、なんだか今日は違う気がする。


「この時期になると、いつも(つかさ)が、懐中電灯を持ってくるんだ」

「心配だよね。まさか、呪いを受けるなんて」

「何で、(つかさ)ばかりが、不幸な目に遭わなきゃいけないんだ」

(つかさ)君、二回目だよね。厄神(やくがみ)の呪いを受けたのは」

「ああ。それもそうなんだ」

「他に何かあるの?」


 響希君は、ゆっくりと口を開き、(つかさ)君の事を話してくれた。


(つかさ)とは家が近くて、同じように(あやかし)を視ることが出来て。いっつも遊んでた。保育園の年長の時に、(つかさ)の母親が家を出ていって。父親は海外出張が多くて、日本に居ることなんて、ほとんどないんだ」

(つかさ)君、帰ったら独りになるんだね」

「小学生まではお祖父さんの家に行ってたけど、中学生になってからは、あまり行かなくなった。アニメとかゲームとか、趣味に没頭したいらしい」


 そろそろ出口のようで、車のヘッドライトの灯りが見える。


「ここまでしか送れないけど、気を付けて帰れよ。白牙がいるから、大丈夫だと思うけど」

「うん。響希君も気を付けてね」

「ああ。(つかさ)の着替え、持って来なきゃだしな」

「鍵、掛かってるんじゃない?」

(つかさ)の父親から、『(つかさ)に何かあったら、その時は頼む』って、お願いされてて。鍵、預かってるんだ」

「そうだったの。それじゃ、また明日」


 森を抜け、白牙とともに家路に着く。

 (つかさ)君が心配だけど、シキがいるから大丈夫だろう。

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