第拾参話 肆
「それでね、考えたんだけど。私たちは、遊女にはなりたくない」
『そうですか……。では、この話は無かったことにしてください』
落ち込む斑牙。表情だけでなく、耳が落ち込みを物語っている。
「そうじゃない。花魁道中の花魁は、斑牙。お前だけでやって欲しい」
『それですと、お二人は』
「私たちは、斑牙の付き人って言うのかな。それをやろうと思っているの」
「花魁道中は、花魁一人に対し、付き人が何人もいるらしい。俺たちは、付き人として斑牙に協力したい」
放課後。響希君、僚君と共に、紅蓮荘へと向かった。
斑牙から話を聞いていたらしいシキは、僚君を連れ、和菓子を買いに行ってくれたので、私たちは安心して話が出来る。
『これ以上、わがままを言えません。ありがとうございます。響希殿、華鈴殿』
「絶対に成功させようね」
「俺たちがいるんだから、失敗するなんてあり得ない」
***
『見たかったな。響希の遊女姿を』
『黒牙のいう通り、ボクも見たかった~。今からでも遅くないよ。響希』
「おい、何で俺だけなんだ? 華鈴じゃないのか?」
『華鈴が可愛いのは、知ってることだよ? あ、和服姿は見たことないかも』
「だろ? 見たいよな? 白牙」
『でもさ。そういうのは、華鈴の気持ち次第だよ』
「俺の気持ちはどうでも良いのか?!」
『そうだ。とでも言っておこう』
「何なんだよ。お前たちは」
式神たちに人間姿になってもらって、早速、準備に取り掛かった私たちは、ちょっとしたパーティーを行う為の、飾り付け作りから始めていく。
「僚とシキ、遅くないか?」
「連絡してみようか。ごめん、黒牙。そこの鞄、取って」
『これだな』
「ありがとう」
黒牙から受け取った鞄から、スマホを取り出し、僚君に電話する。
プルルルル……。プルルルル……。と、呼び出し音が何度も響く。
「出ない。何かあったのかな」
「シキも一緒だから、心配はないと思うが、あまりにも遅すぎる」
『何事も無ければ良いのですが』
数分後。紅蓮荘の扉が開く音が、木の間にいる私たちにも聞こえた。
『水の間は空いていますか?!』
シキの慌てた声。
何かあったのだろうと直感的に感じ、木の間を出てみると、その直感は当たってしまった。
見たくない光景に、私は、言葉が出ない。
人間姿のシキが、顔を赤らめ、過呼吸になった僚君を抱えながら中へと入ってきたのだ。
木の間にいる皆も廊下に出てきて、その光景に言葉を失う。
「シキ、どうしたの? 僚君だよね。何で、過呼吸なの?」
『呪いです。厄神の』
「何があったんだ? 以前の呪いは、シキが祓ってくれただろ?! 僚に何が!!」
『とりあえず、水の間で横にさせたい。響希、そこをどいてください』
響希君はシキに近づき、間髪入れずに問いただしたけれど、シキは冷静に響希君をなだめて、水の間へと入って行った。
もうすぐ誕生日なのに、僚君の身に何があったのだろう。




