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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第拾参話 紅染まる
98/130

第拾参話 肆

「それでね、考えたんだけど。私たちは、遊女にはなりたくない」

『そうですか……。では、この話は無かったことにしてください』


 落ち込む斑牙。表情だけでなく、耳が落ち込みを物語っている。


「そうじゃない。花魁道中の花魁は、斑牙。お前だけでやって欲しい」

『それですと、お二人は』

「私たちは、斑牙の付き人って言うのかな。それをやろうと思っているの」

「花魁道中は、花魁一人に対し、付き人が何人もいるらしい。俺たちは、付き人として斑牙に協力したい」


 放課後。響希君、(つかさ)君と共に、紅蓮荘へと向かった。

 斑牙から話を聞いていたらしいシキは、(つかさ)君を連れ、和菓子を買いに行ってくれたので、私たちは安心して話が出来る。


『これ以上、わがままを言えません。ありがとうございます。響希殿、華鈴殿』

「絶対に成功させようね」

「俺たちがいるんだから、失敗するなんてあり得ない」


 ***


『見たかったな。響希の遊女姿を』

黒牙(こくが)のいう通り、ボクも見たかった~。今からでも遅くないよ。響希』

「おい、何で俺だけなんだ? 華鈴じゃないのか?」

『華鈴が可愛いのは、知ってることだよ? あ、和服姿は見たことないかも』

「だろ? 見たいよな? 白牙(びゃくが)

『でもさ。そういうのは、華鈴の気持ち次第だよ』

「俺の気持ちはどうでも良いのか?!」

『そうだ。とでも言っておこう』

「何なんだよ。お前たちは」


 式神たちに人間姿になってもらって、早速、準備に取り掛かった私たちは、ちょっとしたパーティーを行う為の、飾り付け作りから始めていく。


(つかさ)とシキ、遅くないか?」

「連絡してみようか。ごめん、黒牙。そこの鞄、取って」

『これだな』

「ありがとう」


 黒牙から受け取った鞄から、スマホを取り出し、(つかさ)君に電話する。

 プルルルル……。プルルルル……。と、呼び出し音が何度も響く。


「出ない。何かあったのかな」

「シキも一緒だから、心配はないと思うが、あまりにも遅すぎる」

『何事も無ければ良いのですが』


 数分後。紅蓮荘の扉が開く音が、木の間(きのま)にいる私たちにも聞こえた。


水の間(みずのま)は空いていますか?!』


 シキの慌てた声。

 何かあったのだろうと直感的に感じ、木の間を出てみると、その直感は当たってしまった。

 見たくない光景に、私は、言葉が出ない。

 人間姿のシキが、顔を赤らめ、過呼吸になった(つかさ)君を抱えながら中へと入ってきたのだ。

 木の間にいる皆も廊下に出てきて、その光景に言葉を失う。


「シキ、どうしたの? (つかさ)君だよね。何で、過呼吸なの?」

『呪いです。厄神(やくがみ)の』

「何があったんだ? 以前の呪いは、シキが祓ってくれただろ?! (つかさ)に何が!!」

『とりあえず、水の間で横にさせたい。響希、そこをどいてください』


 響希君はシキに近づき、間髪入れずに問いただしたけれど、シキは冷静に響希君をなだめて、水の間へと入って行った。

 もうすぐ誕生日なのに、(つかさ)君の身に何があったのだろう。

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