第拾参話 参
「ねぇ、りんちゃん。響希、何かあった?」
「どうして?」
「土曜日は普通だったけど、昨日から不機嫌過ぎない?」
月曜日。いつも通りに登校すると、教室には、不機嫌な表情で席に座る響希君と、心配そうな僚君がいた。
「昨日のことは知らないけれど、不機嫌だね。響希君」
「でしょ! 不機嫌過ぎて近寄れないよ」
「昨日も紅蓮荘に行ったの?」
「うん。響希も一緒にね」
おそらく響希君は、昨日も誘われたのだろう。不機嫌な理由は、どう考えたって、ただ一つ。
しかし、この事を僚君に、教えることは出来ない。言ってしまえば、斑牙のサプライズが、台無しになる。
それだけは避けたいけれど、どうしたら言い逃れ出来るだろうか。
「華鈴。少し良いか?」
不機嫌な声で、私を呼ぶ響希君。だけど、表情も怖いし、少し近寄りがたい。
「な、何?」
「ちょっと……。いいから」
恐る恐る、響希君の席に近寄る。ただし、僚君がいるから、大きな声で話せない。
「昨日、来なかっただろ」
「桃麻と出掛けたから、行けなかったけど。それが何?」
「斑牙の件、どうするつもりだ?」
「うーん。斑牙だけでも、大丈夫だと思うんだよね。花魁道中って、花魁は一人だけでやるみたいだし。あ、お付きの者は何人か必要なんだけど」
「お付きの者か。それなら、遊女にならずとも出来るな」
コソコソと、僚君に聞こえないように話すけれど、今、教室にいるのは私たち三人だけ。
聞こえてしまっても不思議ではない。
「ねぇ、二人で何を話してるの? 僕も知りたいんだけど」
「えっと。私が、個人的に受けた依頼の事でね。すぐに終わると思うんだ。そしたら、響希君も個人的に受けてたみたいでね。ね? 響希君」
「あ、あぁ。俺の依頼主と華鈴の依頼主が、仲違いしてるみたいなんだ。仲直りの方法を、模索中」
聞こえていたみたいで、こちらに来る僚君。私たちの会話は、僚君に知られてはいけない。絶対に!
「おはよー。今日も早いね、お三方」
「おはよ、吾妻さん。あ、髪切った?」
「うん。舜は気づかなかったけど、花里が気づいてくれて良かった」
ナイスタイミングだよ! 吾妻さん! 心の中で、吾妻さんに感謝する!
「おはよう、吾妻さん。昨日、桃麻と行ってきたよ。教えてくれた、キッチンカーフェス」
「どうだった? 楽しめたでしょ?」
「ものすごく楽しめた! 桃麻なんて、あれもこれもって。はしゃいでた」
「舜もそうだったよ。まったく、子どもみたいだったし」
「見てみたかったなぁ。そんな須崎さん」
そんな話をしていると、続々と、他のクラスメイトたちが、教室へ入ってきた。
私と吾妻さんの会話で、響希君の話は、完全に強制終了。また後で、話すとしよう。




