第拾弐話 壱
翌朝になっても、白牙は帰って来なかった。
須崎さんの身に、何か危険なことでもあったのかと、朝から考えてしまう。
「りんちゃん。昨日のこと、本当なの? 白牙はまだ帰ってない?」
「シキは何をするつもりなんだ? キノカサと妙月様は、旅に出掛けて、留守にしているんだぞ」
響希君と僚君と、今日は朝から、紅蓮荘で話し合い。
「メールをもらった時は、ピンとこなかったけど、須崎を浄めるのか? シキや白牙は、須崎が見えるけど、須崎は見えないだろ」
「響希、協力的になったね」
「うるさいぞ。俺はただ、吾妻の泣いた顔を見たくないだけだ。吾妻の為に、協力しているだけだ」
「それでも、ありがとう。響希君」
ふん。と、響希君は素っ気なくしているけれど、協力してくれるだけでも、ありがたい。
「シキからも、白牙からも連絡がないなら、僕たちは待つしか出来ないね。りんちゃんは、須崎さんに連絡した?」
「あの後は何も。でも、不思議なんだよ」
「何が? シキも白牙も行ってるなら、なんとかなるだろ」
「そうじゃなくて。須崎さんは、妖気質の能力者なんだよ? シキも白牙も、姿が見えないじゃん」
「あれを使うんじゃないの? ほら、夏祭りで桃麻氏に使ってた……。あれだよ」
「あぁ、あれか。黒牙から聞いたが、妖眼の能力者と同じように、一時的に妖気と身体を、完全合致させるらしい。しかもそれは、永世で固く禁じられた、禁術」
バン!
紅蓮荘の入り口のドアが勢いよく開き、私たちの会話が遮られた。
『華鈴! ボクだよ!』
「白牙!?」
中に入って来たのは、私の式神、白牙。
物凄いスピードで飛んで来たのだろう。息をきらしている。
「須崎さんは、無事なの?」
『それがね。須崎氏、呪われているんだ』
「呪われてる……? どういうことなの?」
『今、ここで話すことは出来ないんだ。シキが、黒牙と斑牙姐さんを呼んでる。響希、僚。呼んでくれないかな』
響希君と僚君が、黒牙と斑牙を呼び出すと、すぐさま須崎家へと向かってしまった。
「えー……。呪われてるってことしか、情報なしなの?」
「急いでいたし、戻って来たら、聞こうよ」
「呪われているなら、俺は本望……」
「響希!? 何言ってるの! 吾妻さんが悲しんでいいなら、言ってなよ!」
「俺は、ただ、須崎を……」
「行ってみよう。今日は土曜日だし、休みなんだから。これを解決させないと、テスト勉強に集中出来ないよ」
白牙が戻って来たと思ったら、黒牙と斑牙を呼びに来ただけ。須崎さんが呪われていることだけが、唯一の情報。
今はお昼前。これから、須崎さんの家に行ってみよう。




