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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第拾壱話 悪しき夢みし
86/130

第拾壱話 結

 帰って、夕食を食べて、入浴後は自室に籠って。もうすぐ行われる中間テストに向けて、テスト勉強。

 だけど、勉強に集中出来ない。


「今、何時だっけ?」

『戌の刻だよ。もうすぐ亥の刻になるよ』

白牙(びゃくが)は、月之盃(つきのさかずき)を知ってる?」

『シキから聞いたことあるけど、よく知らない』

「この世界で生まれたんだもんね。永世(かくりよ)は知らないよね」

『妖犬だから、いつかは行きたいよ。そこに行けば、楽園が広がってるんだって』

「へぇ。人間は、死後の世界にしか行けないから、白牙と一緒に永世(かくりよ)には行けないね」

『そんなこと今から考えちゃダメ。人間の寿命は決まっているけど、まだそんな年じゃないでしょ。それより、返事は来たの? しかも、さっきから勉強進んでないよ』


 そうだった。須崎さんから返信が来てない。

 スマホを確認するけど、まだ来ていない様子。


「倒れてないかな」

『華鈴が弱気になってどうするの? 大丈夫だよ』

「須崎さんを襲っている妖の正体、まだ何にもわからないんだよね……。須崎さんが妖気質(ようきしつ)の能力者ってことくらいしかわからなかったし」

『妖気質の能力者が、襲われてるの!?』


 私の話を聞いた白牙は、かなり驚いたようで、慌てている。


「そうだよ。妖気を感じるだけの人も、能力者なんだね。不完全合致だっけ」

『華鈴、もう一度、その人に連絡して!』

「どうしたの? 白牙」

『いいから、早く! ボク、シキを連れてくるから、その間に連絡してよ!』

「えっ? 白牙、えっ?」


 言うが早いか。シキは部屋の窓を開けて、一目散に、霞ヶ森(かすみがもり)に向かって飛んで行ってしまった。

 そして、取り残された私は、白牙が飛び立った窓から入ってくる風に、ただ吹かれるしか……。


「ちょっと待って。えっ、白牙行っちゃったじゃん! どうしよう!」


 何がなんだかわからない私は、やはり、風に吹かれるしかないらしい。


「須崎さんに連絡しなきゃ。まだ、返信来てないよね」


 机に置いたスマホを再び見てみると、今度は返信が来ていた。


『今までは感じなかったんですけど、何故か感じます』

『それに、池に引き付けられる。そんな感じがします』


『返事が来たようですね。華鈴』

「うわぁ!」


 知らぬ間に、私の隣には、夏祭りの時に見た浴衣姿の、銀髪イケメンが。


「シキ! えっ、その姿で来たの!?」

『まさか。妖狐の姿で来ましたよ。下手をすれば、人間に見られてしまいますからね』

「私の部屋で、変化(へんげ)したの?」

『そうですよ。それにしても、この時代は、面白い物がたくさんありますね。華鈴が持っているその……。()()()とやら。見えない相手と、言葉のない会話が出来るとは』

「あー、うん。そうだね。言葉のある会話も出来るよ」

『そうでしたか。響希と(つかさ)も、以前から使っていたようなので、見慣れましたが、中々面白い』

「そんなことより。須崎さんのことで、来てくれたんでしょ。白牙がかなり慌ててるし、何かあるの? 須崎さん、大丈夫なんだよね?」

『君たちが帰った後、ボクの方で準備をしました。須崎家へ向かい、様子を伺いたい。()しき妖ならば、浄める必要がありますから』


 浄める!? 

 そんなに悪い妖が、須崎さんの家の、枯れた池に沈んでいる盃を狙っているのか。

 放課後、紅蓮荘(ぐれんそう)に寄った時に話していたのは、不完全合致の妖気質の能力者と、完全合致の妖眼(ようがん)の能力者の話だけ。

 もう夜も遅いこともあり、私は行けないけれど、シキと白牙で須崎家へと向かい、様子を視てくると言って、空いたままの窓から飛んで行った。

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