第拾壱話 結
帰って、夕食を食べて、入浴後は自室に籠って。もうすぐ行われる中間テストに向けて、テスト勉強。
だけど、勉強に集中出来ない。
「今、何時だっけ?」
『戌の刻だよ。もうすぐ亥の刻になるよ』
「白牙は、月之盃を知ってる?」
『シキから聞いたことあるけど、よく知らない』
「この世界で生まれたんだもんね。永世は知らないよね」
『妖犬だから、いつかは行きたいよ。そこに行けば、楽園が広がってるんだって』
「へぇ。人間は、死後の世界にしか行けないから、白牙と一緒に永世には行けないね」
『そんなこと今から考えちゃダメ。人間の寿命は決まっているけど、まだそんな年じゃないでしょ。それより、返事は来たの? しかも、さっきから勉強進んでないよ』
そうだった。須崎さんから返信が来てない。
スマホを確認するけど、まだ来ていない様子。
「倒れてないかな」
『華鈴が弱気になってどうするの? 大丈夫だよ』
「須崎さんを襲っている妖の正体、まだ何にもわからないんだよね……。須崎さんが妖気質の能力者ってことくらいしかわからなかったし」
『妖気質の能力者が、襲われてるの!?』
私の話を聞いた白牙は、かなり驚いたようで、慌てている。
「そうだよ。妖気を感じるだけの人も、能力者なんだね。不完全合致だっけ」
『華鈴、もう一度、その人に連絡して!』
「どうしたの? 白牙」
『いいから、早く! ボク、シキを連れてくるから、その間に連絡してよ!』
「えっ? 白牙、えっ?」
言うが早いか。シキは部屋の窓を開けて、一目散に、霞ヶ森に向かって飛んで行ってしまった。
そして、取り残された私は、白牙が飛び立った窓から入ってくる風に、ただ吹かれるしか……。
「ちょっと待って。えっ、白牙行っちゃったじゃん! どうしよう!」
何がなんだかわからない私は、やはり、風に吹かれるしかないらしい。
「須崎さんに連絡しなきゃ。まだ、返信来てないよね」
机に置いたスマホを再び見てみると、今度は返信が来ていた。
『今までは感じなかったんですけど、何故か感じます』
『それに、池に引き付けられる。そんな感じがします』
『返事が来たようですね。華鈴』
「うわぁ!」
知らぬ間に、私の隣には、夏祭りの時に見た浴衣姿の、銀髪イケメンが。
「シキ! えっ、その姿で来たの!?」
『まさか。妖狐の姿で来ましたよ。下手をすれば、人間に見られてしまいますからね』
「私の部屋で、変化したの?」
『そうですよ。それにしても、この時代は、面白い物がたくさんありますね。華鈴が持っているその……。すまほとやら。見えない相手と、言葉のない会話が出来るとは』
「あー、うん。そうだね。言葉のある会話も出来るよ」
『そうでしたか。響希と僚も、以前から使っていたようなので、見慣れましたが、中々面白い』
「そんなことより。須崎さんのことで、来てくれたんでしょ。白牙がかなり慌ててるし、何かあるの? 須崎さん、大丈夫なんだよね?」
『君たちが帰った後、ボクの方で準備をしました。須崎家へ向かい、様子を伺いたい。悪しき妖ならば、浄める必要がありますから』
浄める!?
そんなに悪い妖が、須崎さんの家の、枯れた池に沈んでいる盃を狙っているのか。
放課後、紅蓮荘に寄った時に話していたのは、不完全合致の妖気質の能力者と、完全合致の妖眼の能力者の話だけ。
もう夜も遅いこともあり、私は行けないけれど、シキと白牙で須崎家へと向かい、様子を視てくると言って、空いたままの窓から飛んで行った。




