第拾壱話 漆
「気になること?」
「妖気だけを感じることが出来る人間と、妖眼の能力を持つ人間の違い」
『今回の依頼に、関わる話ですね』
「ああ。何か知ってるか?」
『もちろんです。響希も、座ってください。お話ししましょう』
僚君の隣に座った響希君。それを確認すると、シキがゆっくりと、話し出した。
『妖が放つ気。妖気は本来、人間には感じることが出来ないモノ。
君たちのように妖が見える人間がいますが、それはごく稀なんです。そのことは、君たちが一番よく知っているでしょうから、これ以上は言いません。妖気のみを感じる人間は、君たちと違い、妖の姿形を見ることが出来ない。それは、妖眼の能力者よりも、妖気の波長が、自身の身体と不完全合致しているからなんです』
不完全合致。はじめて聞く言葉に、私たちは首を傾げる。
「不完全合致って何? 僕たちと違うのは、わかってるんだけど」
「黒牙が言っていたが、妖気を感じるだけの人間は、『妖気質の能力者』と呼ばれるらしいな。人によっては、悪寒を感じたり、体調を崩すとか」
「須崎さんがそうだよ。妖がいると、妖気で悪寒がするって。それより、不完全合致だっけ? 何それ」
『不完全合致とは。身体と妖気の波長が、百パーセント未満の合致をしていることを、表す言葉です。一パーセントから九十九パーセント合っている人間が、妖気質の能力者と呼ばれます』
「一パーセントだけでも合うと、妖気質なのか。てことは、俺たちは、百パーセント合っているのか?」
『その通り。妖眼の能力者は、百パーセント合っていますよ』
私たちは、妖が見える『妖眼の能力者』。須崎さんは妖を見れないけれど、妖気を感じる『妖気質の能力者』。
遠いようで近い、どう説明したらいいのかわからない、関係になるのだろう。
ピロン。
そんなことを考えていると、テーブルに置いたままの私のスマホが、メールを受信し、鳴った。
送り主を確認すると、メールのことを皆に伝える。
「須崎さんから。さっき送ったメールの返事みたい」
『どうでしたか?』
「えっと。『枯れた、小さな池があります』だって」
『そうですか。須崎氏にもう一度、メールとやらを送ってください』
「いいよ。何て送ればいいの?」
『その池に近づいて、妖気を感じるか。そう、送ってください』
「池に近づいて……。はい。送ったよ」
『ありがとう、華鈴。そろそろ暗くなって来ましたし、帰った方がいい。人間界は、何があるか、わかりませんから』
窓の外を見ると、薄闇が広がっていた。
シキの言う通り、今日はこのくらいにして、帰ろう。
「須崎さんから返事が来たら、シキに伝えたいんだけど、どうしよ?」
『それでしたら、この紙人形に返事の内容を書いて、紅蓮荘に届くよう念じながら、飛ばしてください。不安でしたら、白牙がいますから。大丈夫ですよ』




