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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第拾壱話 悪しき夢みし
85/130

第拾壱話 漆

「気になること?」

「妖気だけを感じることが出来る人間と、妖眼(ようがん)の能力を持つ人間の違い」

『今回の依頼に、関わる話ですね』

「ああ。何か知ってるか?」

『もちろんです。響希も、座ってください。お話ししましょう』


 (つかさ)君の隣に座った響希君。それを確認すると、シキがゆっくりと、話し出した。


『妖が放つ気。妖気は本来、人間には感じることが出来ないモノ。

 君たちのように妖が見える人間がいますが、それはごく稀なんです。そのことは、君たちが一番よく知っているでしょうから、これ以上は言いません。妖気のみを感じる人間は、君たちと違い、妖の姿形(すがたかたち)を見ることが出来ない。それは、妖眼の能力者よりも、妖気の波長が、自身の身体と不完全合致しているからなんです』


 不完全合致。はじめて聞く言葉に、私たちは首を傾げる。


「不完全合致って何? 僕たちと違うのは、わかってるんだけど」

黒牙(こくが)が言っていたが、妖気を感じるだけの人間は、『妖気質(ようきしつ)の能力者』と呼ばれるらしいな。人によっては、悪寒を感じたり、体調を崩すとか」

「須崎さんがそうだよ。妖がいると、妖気で悪寒がするって。それより、不完全合致だっけ? 何それ」

『不完全合致とは。身体と妖気の波長が、百パーセント未満の合致をしていることを、表す言葉です。一パーセントから九十九パーセント合っている人間が、妖気質の能力者と呼ばれます』

「一パーセントだけでも合うと、妖気質なのか。てことは、俺たちは、百パーセント合っているのか?」

『その通り。妖眼の能力者は、百パーセント合っていますよ』


 私たちは、妖が見える『妖眼の能力者』。須崎さんは妖を見れないけれど、妖気を感じる『妖気質の能力者』。

 遠いようで近い、どう説明したらいいのかわからない、関係になるのだろう。


 ピロン。


 そんなことを考えていると、テーブルに置いたままの私のスマホが、メールを受信し、鳴った。

 送り主を確認すると、メールのことを皆に伝える。


「須崎さんから。さっき送ったメールの返事みたい」

『どうでしたか?』

「えっと。『枯れた、小さな池があります』だって」

『そうですか。須崎氏にもう一度、メールとやらを送ってください』

「いいよ。何て送ればいいの?」

『その池に近づいて、妖気を感じるか。そう、送ってください』

「池に近づいて……。はい。送ったよ」

『ありがとう、華鈴。そろそろ暗くなって来ましたし、帰った方がいい。人間界は、何があるか、わかりませんから』


 窓の外を見ると、薄闇が広がっていた。

 シキの言う通り、今日はこのくらいにして、帰ろう。


「須崎さんから返事が来たら、シキに伝えたいんだけど、どうしよ?」

『それでしたら、この紙人形に返事の内容を書いて、紅蓮荘(ぐれんそう)に届くよう念じながら、飛ばしてください。不安でしたら、白牙(びゃくが)がいますから。大丈夫ですよ』

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