第拾壱話 陸
『なるほど。話はわかりました。その方は、妖気を感じられる体質なんですね。そして夢で妖に襲われている……』
「私、考えてみたんだけど、須崎さんは、夢の中で妖気を感じたから、夢に出てきた人を妖だと言っているんだよね」
「確かに、りんちゃんの言う通りかも。夢に出てきたのが人間であれば、『人に襲われている』って言うよ」
放課後、急いで紅蓮荘に向かい、シキに相談。
キノカサも妙月様も出掛けているようで、紅蓮荘にはシキしかいない。
私たちは、『木の間』で話すことにした。
「ツキノサカズキは、わかる? シキ」
『ええ。先日、中秋の名月でしたよね。妖にとってその日は、特別でして。永世に、妖光酒という名の酒が、湧き出る池があるんです。それはもう、この世の物とは思えないほどの旨さ……』
「それで、ツキノサカズキは?」
シキが言うには、『月之盃』と呼ばれるそれは、永世の名工が作ったと云われる、幻の盃。
『月之盃』は、永世にのみ存在し、現世に存在してはいけないモノ。
中秋の名月の光を吸収し、輝く『月之盃』は、誰の手に渡ることなく、妖光酒が湧き出る池の底に、沈められていると云う。
「『月之盃』は、なんで沈められているの?」
『昔々の話なのですが、その盃を手に入れるため、戦乱が巻き起こったのです。それを見ていた永世の神が、妖光酒が湧き出る池に、盃を沈めたと云われています』
「そんなに凄い盃なの?」
『月之盃は、中秋の名月の夜にだけ、姿を現す盃なんです。ただ、月の光を受けていますので、妖力や妖気がとても強い。その盃で妖光酒を飲めば、妖力等が上々するのです』
「それなら、下級の妖たちは、手に入れたくなるね。中級や上級の妖だって、強さを求めるだろうし」
私と僚君は、シキの話に疑問を抱いた。
「ちょっと待って。シキ。『月之盃』は、現世に存在してはいけないんでしょ? それに、池の底に沈められているなら……」
『ボクの推測ですが。永世の池と、現世の須崎家の何処かしらが、繋がってしまったのでしょう』
「池なら、池と繋がったんじゃないかな。りんちゃん、須崎さんの家に、池があるか聞いてみて」
「うん。わかった」
スマホを鞄から取り出し、須崎さんにメールを送る。簡潔に、永世の池のことを伏せたまま。
「少し、聞いてもいいか? シキ」
二階の書庫にいたのだろう、紅蓮荘に着いてから、一度も姿を見なかった響希君が、何やら厚そうな本を手に、『木の間』に入ってきた。
『なんでしょうか?』
「妖気を感じることが出来る人間と、妖眼の能力を持つ、俺たちのような人間の違いについて」
『違い、ですか。そうですね……』
「響希、それを聞いてどうするの?」
「気になることがあったからな」




