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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第拾壱話 悪しき夢みし
84/130

第拾壱話 陸

『なるほど。話はわかりました。その方は、妖気を感じられる体質なんですね。そして夢で妖に襲われている……』

「私、考えてみたんだけど、須崎さんは、夢の中で妖気を感じたから、夢に出てきた人を妖だと言っているんだよね」

「確かに、りんちゃんの言う通りかも。夢に出てきたのが人間であれば、『人に襲われている』って言うよ」


 放課後、急いで紅蓮荘(ぐれんそう)に向かい、シキに相談。

 キノカサも妙月(みょうげつ)様も出掛けているようで、紅蓮荘にはシキしかいない。

 私たちは、『木の間(きのま)』で話すことにした。


「ツキノサカズキは、わかる? シキ」

『ええ。先日、中秋の名月でしたよね。妖にとってその日は、特別でして。永世(かくりよ)に、妖光酒(ようこうしゅ)という名の酒が、湧き出る池があるんです。それはもう、この世の物とは思えないほどの旨さ……』

「それで、ツキノサカズキは?」


 シキが言うには、『月之盃』と呼ばれるそれは、永世(かくりよ)の名工が作ったと云われる、幻の盃。

『月之盃』は、永世(かくりよ)にのみ存在し、現世(うつしよ)に存在してはいけないモノ。

 中秋の名月の光を吸収し、輝く『月之盃』は、誰の手に渡ることなく、妖光酒が湧き出る池の底に、沈められていると云う。


「『月之盃』は、なんで沈められているの?」

『昔々の話なのですが、その盃を手に入れるため、戦乱が巻き起こったのです。それを見ていた永世(かくりよ)の神が、妖光酒が湧き出る池に、盃を沈めたと云われています』

「そんなに凄い盃なの?」

『月之盃は、中秋の名月の夜にだけ、姿を現す盃なんです。ただ、月の光を受けていますので、妖力や妖気がとても強い。その盃で妖光酒を飲めば、妖力等が上々するのです』

「それなら、下級の妖たちは、手に入れたくなるね。中級や上級の妖だって、強さを求めるだろうし」


 私と(つかさ)君は、シキの話に疑問を抱いた。


「ちょっと待って。シキ。『月之盃』は、現世(うつしよ)に存在してはいけないんでしょ? それに、池の底に沈められているなら……」

『ボクの推測ですが。永世(かくりよ)の池と、現世(うつしよ)の須崎家の何処かしらが、繋がってしまったのでしょう』

「池なら、池と繋がったんじゃないかな。りんちゃん、須崎さんの家に、池があるか聞いてみて」

「うん。わかった」


 スマホを鞄から取り出し、須崎さんにメールを送る。簡潔に、永世(かくりよ)の池のことを伏せたまま。


「少し、聞いてもいいか? シキ」


 二階の書庫にいたのだろう、紅蓮荘(ぐれんそう)に着いてから、一度も姿を見なかった響希君が、何やら厚そうな本を手に、『木の間』に入ってきた。


『なんでしょうか?』

「妖気を感じることが出来る人間と、妖眼(ようがん)の能力を持つ、俺たちのような人間の違いについて」

『違い、ですか。そうですね……』

「響希、それを聞いてどうするの?」

「気になることがあったからな」

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