第拾壱話 伍
「りんちゃんは、昨日の話、どう思った?」
「まさかの一言かな。妖の姿が、信じられないよ」
「だよね。意外過ぎるよね」
翌日の昼休み。いつものように、響希君と僚君と、誰も来ない視聴覚室で、昨日の話をする。
「俺、教室に戻っていいか?」
「ダメに決まってるでしょ! 響希も解決策を考えてよ」
「何で俺もなんだよ。須崎とか言う男の話は、聞いていないんだぞ」
「でもさ、響希の大っ好きな吾妻さんが、最終的にはよろこぶんだよ?」
僚君の、会心の一撃。
長い沈黙の後。響希君はゆっくりと、口を開いた。
「吾妻が喜ぶなら、協力しないでもない」
拗ねたような口調で、響希君も協力してくれることになったけれど、妖の姿を、響希君に伝えても良いのだろうか。
「どうした? 華鈴」
「なんでもないよ。響希君が協力してくれるなら、この依頼はすぐに終わるね」
「そうか。俺は、吾妻の為に依頼を受ける。ところで、妖の姿について、何か聞いているのか?」
この流れはマズイよ。僚君!
そんな思いで僚君を見ると、大丈夫とでも言いたげに、手で制してきた。
「その事なんだけどね、僕たちも理解出来ないんだ。響希が聞いたら、ショックで倒れるよ」
「俺はそんなことで倒れないぞ」
「じゃあ、どうなっても知らないからね。僕たちは責任取らないよ」
「ふん。早く言え」
「吾妻さんなんだよ。声も何もかも、吾妻さんなんだ」
僚君の口から告げられる、須崎さんを襲っている妖の姿。
私は下を向き、響希君の表情を知ることは出来ない。
「嘘だろ? 吾妻が、襲っているのか?」
「僕が思うのは、人間の夢に入り込み、好きな人の姿となって、襲う妖の仕業」
「須崎って男は、吾妻のことが好きだから、吾妻の姿になって襲った……。何故、吾妻なんだ?! 他の奴にしろよ!」
「響希君、落ち着こ。ね?」
顔を上げ、響希君を見据える。
「シキに聞いてみようよ。何か知ってるはずだよ」
「そうだよね。今日が短縮授業で良かったよ。時間がたくさんある」
「吾妻の為だからな。俺は、必要以上に協力はしない」
ピロン。
私のスマホが鳴り、見てみると、須崎さんからメールが。
『昨夜の夢の中で、「ツキノサカズキを返せ」と妖に言われました。俺は何の事だかわからないのですが、ツキノサカズキを、雪村さんはご存知ですか?』
響希君と僚君にもこの画面を見せ、二人にもメールの内容を知ってもらう。
「ツキノサカズキ? 聞いたことないよ」
「それもシキに聞くか。俺は聞かないけど」
「とりあえず、響希君も来て。私と僚君で、須崎さんのことと妖のことを調べるから。響希君は、ツキノサカズキについて、調べてね」
「だってさ、響希」
「協力すると言ったんだ。そのくらいなら、やってやる」




