第拾壱話 肆
翌日、なんとか学校に来ていた響希君は、放課後になるとすぐに帰ってしまった。
「りんちゃん、ごめんね。響希に何度も言ったんだけどさ、やっぱり嫌みたい」
「失恋したんだもん。仕方ないよ」
「吾妻さんの彼氏さんとは、どこで会う予定?」
「ファミレスだよ。須崎さんから昨夜連絡をもらって、桃麻には内緒にしておきたいから、僚君も内緒にしてて」
「わかった。内緒だね」
二人で話ながら、待ち合わせ場所のファミレスに向かう。
「吾妻さんも来るの?」
「来たがっていたけど、須崎さんに止められたみたいだよ。昨日の夜に、メールが来たの」
「内容によっては、吾妻さんに聞かれたら、マズイんじゃないかな」
***
「お待たせしました。須崎さん」
「いえ。俺も今来たところなので。そちらは?」
「花里僚です。桃麻君の友人なんです。僕も妖を見ることが出来るので、須崎さんのお力になれると思いますよ」
「よろしくお願いします。花里さん」
ファミレスに着くと、既に須崎さんが四人掛けのテーブルに座っていた。
元気がなく、両目は寝不足なのがわかるほどのクマ。
私たちは、フリードリンクと軽食を注文し、早速本題へ。
「吾妻さんから聞きました。悪夢を見ているそうですね」
「そうなんです。ここ数日、毎晩のように」
「須崎さんは、妖の放つ気を感じられるんですよね? 最近、何か感じましたか?」
「あるとすれば、向かいの家の、妖怪の気ですね。それには慣れてきたので、大丈夫なんですが……」
「その妖たちは、害はありません。別の何処かで、妖の気を感じませんでしたか?」
「思い当たる場所はないです。もしかして、夢に出てくる妖怪に、怨まれているのでしょうか? 俺、妖怪に何かしたのでしょうか?」
藁にも縋る思いなのだろう。須崎さんは、私や僚君の顔を、真っ直ぐに見据えている。
「詳しく調べてみないと、私たちはわかりません。どんな妖なのか、教えて下さい」
「はい……」
弱々しい声で須崎さんが教えてくれた妖は、とても意外な姿で、私も僚君も、その言葉を信じて良いのかどうか、判断出来ずにいた。
フリードリンクのグラスと共に、軽食が運ばれてきて、一度会話を止める。
会話を止めたとしても、頭の中で、入ったばかりの情報を処理出来ない。
「みずきには、妖怪の姿を明かしてはいません。どうか、みずきにだけは、内緒にしてて下さい。お願いします」
「わかりました。内緒にしておきます」
「笹本にも内緒にして下さい。心配してくれたんですけど、妖怪関連だと明かせば、グイグイ来るので」
「だから、桃麻には言わなかったんですね。大丈夫ですよ。何も言わなければ、桃麻は恐らく、体調不良だと思うはずなので」
「それなら良かったです」
軽食を食べたり、ジュースを飲んだり。一時間程で、私たちはファミレスをあとにした。




