第拾壱話 参
響希君と僚君に話したのはいいけれど、須崎さんから連絡がなければ、何も始まらない。
「雪村さん。昼休み中に、舜から連絡があったの。明日の放課後、話せないかって」
「明日ね。わかった。いいよ」
「それと、これが舜の連絡先」
「ありがとう。吾妻さん」
昼休みが終わって教室に戻ると、隣の席の吾妻さんが、須崎さんからの連絡を受けてくれたようで、返事等々を教えてくれた。
「須崎さんの体調は、大丈夫?」
「大丈夫そうだけど。最近、会ってなくて」
「会ってないの?」
「倦怠期ってやつかな。雪村さんたちは?」
「先週の土曜日に、桃麻の家でゲームした」
「いいねぇ。あたしたちとは、大違い」
はぁ。と、吾妻さんはため息を一つ。
「それでも、連絡はくれるから。だからなのかな。舜が、悪夢を見てることを明かしてくれたのは、なんか嬉しかった」
「ちゃんと吾妻さんのことを、信頼してるんだね。須崎さん」
「してくれてるのかな~」
***
「華鈴、ちょっといいか?」
「いいけど、何?」
放課後。教室の掃除を終えて、これから紅蓮荘に向かう為、帰る準備をしていると、響希君が教室に戻ってきた。
「あ、いた! 響希!」
ついでに、僚君も。『ついで』は悪かったかな。
響希君を追いかけて、教室に戻ってきた様子。
「華鈴。吾妻に彼氏がいるのは、本当なんだな?」
「そうだけど……? 実際、二人も見かけたこと、あるはずだよ。夏休み初日に」
「もしかして、桃麻氏の補習課題を手伝うとか言ってた人?」
「そうそう。その人」
「マジかよぉ……」
えっ。どうしたの? 響希君。
「響希君? どうしたの?」
「聞くなっ!」
ヘナヘナと、膝から崩れ落ちていく響希君は、今まで見たことがない。
なんだか、新鮮。
「響希ね、吾妻さんに片思いしてたんだよ。だけど、今日の昼休みにりんちゃんが、『吾妻さんに彼氏がいる』って言ってから、響希がもう……」
「そうだったの? そんな感じはしなかったけど」
「それ以上言うな! 学校に来れなくなるだろ、俺が!」
顔を真っ赤にした響希君は、ムスッと頬を膨らまし、目には涙を浮かべている。
普段とは違い、とても可愛い。
「明日の放課後、須崎さんと会えるって」
「明日だね。わかった」
「俺も、行かなきゃ駄目か? 僚と一緒に行ってくれ。俺は、行きたくねぇ」
「昼休みは、本人から聞きたいって言ってたでしょ? 響希君」
「よくよく考えたら、吾妻の彼氏だ。つまり、敵だ!」
「響希も行くよ! この前の依頼の時、嫌々言う僕を、連れ出したじゃん!」
「それでも俺は! 行きたくないんだ!」
ギャアギャア言い合う二人を、私は見ているしかないのだった。




