第拾壱話 壱
秋も深まり、木々の葉が朱や黄に染まっている十月。
それは、突然起きたのだった。
十月になって間もない木曜日。
朝、誰もいないであろう教室に入ると、隣の席の吾妻みずきさんが、登校していた。
これはよくあることで、私か吾妻さんのどちらかが、一番乗りしている。
「おはよ。吾妻さん」
返事がない。机に突っ伏し、何だかいつもと様子が違う。
眠たいのかな。
私が席に近づくと、吾妻さんは気がついたみたいで、顔を上げた。
「お、おはよ。雪村さん」
「おはよー。吾妻さん」
よく見たら、目が赤く、腫れている。
「吾妻さん。どうしたの? もしかして、泣いてた?」
「えっ、あ、ちょっとね」
「何かあったの? 話、聞くよ」
この一言に、吾妻さんは泣き出してしまった。
「お願い。舜を助けて。舜がぁ!」
「落ち着いて。吾妻さん。ね? 須崎さんに、何かあったの?」
吾妻さんが落ち着くまで、待つしかない。
***
数分後、だいぶ落ち着いてきた吾妻さんから話を聞けた。
目は赤く腫れたままだけど、話を聞くことが出来そう。
「舜ね、数日前から悪夢を見ているみたいなの。しかも、その夢に、妖怪が出てきていて」
「どんな妖怪?」
「詳しくは聞いてなくて。何回も見ているんだけど、全部に同じ妖怪が出てくるんだって」
夢に出てくる妖怪? そんな妖怪は、聞いたことがない。
私には何とも出来ないだろうから、響希君と僚君に相談する必要がある。
「襲われる夢なんだって。舜、妖怪は見えないけど、妖怪が放つ気って言うのかな。感じられるでしょ」
「もしかしたら、それが原因かもしれないね。私みたいに、見ることが出来たら、もっと酷い状況になってたかも」
「どうしよ。雪村さん」
「私だけじゃ、何とも出来ない。とりあえず、須崎さんから話を聞きたい」
どういう夢なのか、どんな妖なのかわからない。
須崎さんに話を聞くことが、最優先だろう。
「吾妻さん。この話を、響希君と僚君に、私の方から伝えてもいいかな? あの二人も、妖を見ることが出来るの」
「月島と、花里に?」
「そう。私だけじゃ、須崎さんを助けることが出来ないの」
「あの二人も見えたんだ。雪村さん。二人にもお願いします。舜を助けて」
本当に須崎さんのことが好きなんだなぁ。
彼氏思いの、良い彼女だね。吾妻さん。
「約束する。昼休みに二人と話すから、須崎さんの都合の良い日を、聞いてもらえるかな。須崎さんから詳しい話を聞きたい」
「わかった。舜の連絡先は知ってる?」
「知らないの。吾妻さんづたいに連絡をくれれば、いいよ」
「舜に伝えとく。会った時に連絡先を交換して。都合の良い日は、あたしの方から、雪村さんに伝えるから」




