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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第拾話 妖の名
75/130

第拾話 伍

片浜(かたはま)って、ここから何駅?」

「乗り換える必要あったはずだから、ここからだと八駅」

「遠すぎない!? こんなことなら、響希だけで行けば良かったじゃん!」

「切符代は出してやるって、言ったぞ。(つかさ)

「だったら、僕は行かなくてもいい? シキと一緒に待ってるからさ」


 土曜日。

 女の子妖と一緒に、片浜の地に行き、名前が消えてしまった理由を探る。

 電車で八駅の片浜までは、かなり時間がかかってしまうけれど。


「ダメに決まっているだろ」

「お菓子あるから、食べながら行こうよ。(つかさ)君」

『申し訳ありません。私のせいで』

「きみのせいじゃないよ。響希が強制的だったからね。気にしないで!」


 嫌がる(つかさ)君を、無理やりホームまで連れていき、電車が来るまでお菓子を食べて待つ。


「ねぇ、響希君」

「なんだ?」

「今日の(つかさ)君、機嫌悪い?」

「すごく悪いな。実は今日、あいつの好きな映画が公開されたんだ。かなり楽しみにしてたみたいで……」

「そこを無理やり連れて来たんだね」


 (つかさ)君が女の子妖と遊んでいる間、今日の(つかさ)君について、響希君に聞いてみた。


「でもまぁ。あの妖と仲良くしてるから、機嫌は良くなったんじゃないか?」

「だといいけど」


 そんなこんなで、電車が来た。

 私と響希君が先立って乗り込み、(つかさ)君は女の子妖に手を引かれながら、渋々乗り込む。


 四人座れる場所があったけれど、女の子妖は普通の人には見えない。

 どうしようかと悩んだ末、何故か仲良くしている、(つかさ)君の膝の上に座ることで、話はまとまった。


(つかさ)君のこと、気に入ったの?」

『はい! (つかさ)様から、馴染みのある香りがするのです! どこか懐かしい感じの』


 (つかさ)君は気に入られて、なんだか嬉しそう。

 機嫌、良くなってくれたのかな。


「妖って、本当に体重がないんだね。凄く軽い。重さがないのかな」

『妖は、人間や獣とは違うんですよ。(つかさ)様は、ご存知ありませんでしたか?』

「知ってはいたよ。ただ、妖を抱っこしたことなかったから」

(つかさ)様はとても優しい方です。私の為に、片浜の地まで来てくださるのですから』


 電車の中では不審がられないよう、女の子妖と話す時だけは、小声。

 普通の人たちは、妖がいると知っただけで、パニックになってしまうだろう。


「次の駅で、乗り換えだ」

「何時くらいに片浜に着くの?」

「昼前くらいだな」


 片浜までの道のりは、とても長い。

 今日一日だけで解決出来たら良いのだけれど、名前を探して、消えた理由まで探さなければならないのだから、帰る頃には日が沈んでいるだろう。


「降りるぞ。急げ」


 響希君の声で我に返ると、乗り換える為に、降りる駅だった。

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