第拾話 伍
「片浜って、ここから何駅?」
「乗り換える必要あったはずだから、ここからだと八駅」
「遠すぎない!? こんなことなら、響希だけで行けば良かったじゃん!」
「切符代は出してやるって、言ったぞ。僚」
「だったら、僕は行かなくてもいい? シキと一緒に待ってるからさ」
土曜日。
女の子妖と一緒に、片浜の地に行き、名前が消えてしまった理由を探る。
電車で八駅の片浜までは、かなり時間がかかってしまうけれど。
「ダメに決まっているだろ」
「お菓子あるから、食べながら行こうよ。僚君」
『申し訳ありません。私のせいで』
「きみのせいじゃないよ。響希が強制的だったからね。気にしないで!」
嫌がる僚君を、無理やりホームまで連れていき、電車が来るまでお菓子を食べて待つ。
「ねぇ、響希君」
「なんだ?」
「今日の僚君、機嫌悪い?」
「すごく悪いな。実は今日、あいつの好きな映画が公開されたんだ。かなり楽しみにしてたみたいで……」
「そこを無理やり連れて来たんだね」
僚君が女の子妖と遊んでいる間、今日の僚君について、響希君に聞いてみた。
「でもまぁ。あの妖と仲良くしてるから、機嫌は良くなったんじゃないか?」
「だといいけど」
そんなこんなで、電車が来た。
私と響希君が先立って乗り込み、僚君は女の子妖に手を引かれながら、渋々乗り込む。
四人座れる場所があったけれど、女の子妖は普通の人には見えない。
どうしようかと悩んだ末、何故か仲良くしている、僚君の膝の上に座ることで、話はまとまった。
「僚君のこと、気に入ったの?」
『はい! 僚様から、馴染みのある香りがするのです! どこか懐かしい感じの』
僚君は気に入られて、なんだか嬉しそう。
機嫌、良くなってくれたのかな。
「妖って、本当に体重がないんだね。凄く軽い。重さがないのかな」
『妖は、人間や獣とは違うんですよ。僚様は、ご存知ありませんでしたか?』
「知ってはいたよ。ただ、妖を抱っこしたことなかったから」
『僚様はとても優しい方です。私の為に、片浜の地まで来てくださるのですから』
電車の中では不審がられないよう、女の子妖と話す時だけは、小声。
普通の人たちは、妖がいると知っただけで、パニックになってしまうだろう。
「次の駅で、乗り換えだ」
「何時くらいに片浜に着くの?」
「昼前くらいだな」
片浜までの道のりは、とても長い。
今日一日だけで解決出来たら良いのだけれど、名前を探して、消えた理由まで探さなければならないのだから、帰る頃には日が沈んでいるだろう。
「降りるぞ。急げ」
響希君の声で我に返ると、乗り換える為に、降りる駅だった。




