第拾話 肆
放課後、響希君と僚君と一緒に羊羮を買って、紅蓮荘に向かう。
「羊羮を買ってどうするの?」
「シキがね、キョウカ様から美味しい茶葉をもらったの。昨日も買って行ったんだけどね」
紅蓮荘で女の子妖と一緒に食べたことを話す。
「お茶に羊羮は、合うな」
「響希、羊羮好きだもんね。こしあん派だっけ?」
「ああ。つぶあんより、こしあんの方がうまい」
「僚君は、どっち派?」
「僕はつぶあん派。りんちゃんは?」
「私もつぶあん派」
「俺の味方はいないのか」
そんな会話をしていると、あっという間に紅蓮荘に到着。
「こんにちは~。シキー、いないのー?」
扉を開け、シキを呼んでみたけれど、中から返事はなく、静寂が続いている。
「出掛けたか」
「だとしたら、森の妖たちが教えてくれるでしょ。だとしたら、シキは紅蓮荘から出てない」
「それなら、どこに行ったの?」
『おやおや。来ていましたか』
二階に続く階段から、シキが現れ、私たちは驚いてしまった。
「ビックリしたよ。シキ、どこにいたの? 僕たちの声、聞こえなかった?」
『失礼しました。書庫の掃除と整理をしていまして』
「夢中になったんでしょ。掃除していると、ついつい読んじゃうよね」
『まさに、おっしゃる通り』
中に入って、私はともかく、響希君と僚君は、女の子妖から話を聞かなければならない。
「女の子妖はどこ?」
『あの方は、書庫の掃除を手伝って頂いていました』
「話を聞きたいんだ。いいか?」
『かまいませんよ。呼んで来ますから、木の間で待っててください』
***
『お待たせしました。あ、昨日の』
木の間で待っていると、ゆっくりと扉を開けて、中へ入ってきた女の子妖。
「こんにちは。昨日は、私だけだったけれど、今日は、この二人にも話してくれないかな」
『わかりました。よろしくお願いします』
昨日私に話してくれた内容を、再び話してくれた。
「なるほど。片浜の地から、来たのか」
『はい。こちらに、相談を受けてくれる紅蓮荘があると、風の噂で聞きました』
「名前は、奪われたわけではなく、消えていた」
『その通りです』
「妖にとって、名前がどういうモノなのか知っているか?」
『魂。ですよね。私も変だと思いました。名前が消えたはずなのに、私は消えていない。私にもわからないのです。何が起きているのか。名前が消えた理由を知りたいのです』
真っ直ぐ響希君を見つめている、女の子妖の瞳。
響希君は色々考えているようで、腕組みをしている。
「週末、片浜の地に行く。おそらくだが、片浜の地に原因があると思う」




