第拾話 参
「名前を、探すの?」
「不明点が多すぎる。俺たちも行くから、その妖から話を聞くしかないな」
昼休みに、響希君と僚君に、女の子妖のことと、依頼を伝える。
「その女の子妖は、何処から来たの?」
「片浜から」
「片浜!? そこって、沿岸部だよね!? 遠くない!?」
「だから、名前が見つかるまでの間、紅蓮荘に泊まるって」
今日はあいにくの雨。
無言の私たちを、雨音が包み込む。
「名前がない妖……。奪われたわけではなく、消えていた……」
唐突に響希君が呟く。
「ねぇ、奪われたとか、どういうこと? シキも言ってたの」
昨日から何気に、気になっていた。
「名前を奪う妖がいるんだ。そいつは、妖の名前を喰らう。つまり、妖の魂を喰らう」
「僕たちは、その噂を聞いただけだから、はっきりとしたことを知らないけどね」
そんな妖がいるなんて、知るわけもなく。
女の子妖は、名前を奪われたわけではない。
だけど……。
「名前が消えることはあるの?」
「ないはずだよ。名前は妖の魂。名前が消えたら、妖自体が消える」
「本人の思い過ごしなだけで、名前は消えていないんじゃないか? 名前が消えているのに、妖としての実体があるのは不自然だ」
「じゃあ、あの女の子妖は、何者なの?」
「会ってみないと、俺たちもわからない」
***
五時間目の地理は、先生の出張で、自習になっている。
社会科室で自習を行うため、教室移動。
社会科室は、教室棟と渡り廊下で繋がっている管理棟にあり、それなりに距離がある。
「自習で助かったよね」
「もしかして、りんちゃん。気になってるの?」
「何を?」
「例の妖のこと」
響希君と僚君と一緒に、話ながら向かう。
やはり話題は、女の子妖。
「シキは何か言ってたのか?」
「何も。響希君と同じように、『奪われたかどうか』聞いてた」
「悪しき妖は入れないから、その妖は、狙われる心配はないだろ。あそこには、シキの他に、キノカサだって妙月様だっているんだし」
昼休みに降っていた雨は、徐々に強くなっていき、今はどしゃ降り。
どんよりとした空は、モヤモヤしている私の胸の中を表しているよう。
放課後までに、雨が弱まってくれたらいいのにな。
「とにかくさ。今は考えずに、自習を楽しもうよ。りんちゃんも、響希もさ!」
「そうだな。せっかくの自習だもんな」
「僚君に言われるとは思わなかったけれど、その通りだよね」
今はとにかく、妖のことを考えないようにしよう。




