第拾話 壱
九月。
夏休みが終わり、二学期が始まった。
「二学期始まったね~。僕、もう少し休んでいたかった」
「二学期の始めって、なんで憂うつになるのかな」
「お前たち、ここに来てまで言うことか?」
昼休みの誰もいない視聴覚室は、今や、私たちの集合場所となっている。
二学期最初の登校でも、それは変わらない。
「それにしても。最近、依頼ないね」
「僕も、それ思ってた」
「最近の依頼は、終業式が終った日の、妖探しか」
そう。夏休み中、妖からの依頼は、ひとつもなかった。
「去年は、あったよね」
「二、三件あったな」
「今年はゼロだし、なんだか物足りない」
「僚、それを言うな」
「りんちゃんは、何かあった?」
「えっ、私?」
「何かなかったか?」
何かって言われても……。
「何もなかったよ。あったとすれば、カヌの卵が孵化したくらいだし」
「カヌ?」
「なんだそれ?」
かくかくしかじか。
カヌの卵との出会いやら、孵化前後の話を、二人に教える。
「へぇ。そんなことがあったの」
「白牙にそんな過去があったとは」
「私だって、知らなかったよ」
それにしても。
「とりあえず、放課後どうする?」
「僕は……。どうしよ」
「紅蓮荘に行っても、依頼ないしな」
***
「こんにちは。シキ」
『おや、華鈴。こんにちは。今日は、響希と僚と一緒じゃないんですね』
「うん。二人はもう帰ったんじゃないかな」
『そうですか』
放課後、家に向かって歩いていると、前をシキが歩いていた。
声をかけていいものかと思ったけれど、まぁ、いいよね。
「最近依頼がないけど、シキは退屈じゃない?」
『そうですね。依頼もありませんし、キノカサと妙月殿が、現在旅行中でして、退屈です』
「キノカサと妙月様、出かけてるの?」
『神守祭の翌日に、出かけましたよ』
キノカサは旅が大好きな妖。
朱音寺妙月様は、かつてキノカサを式神として契約していたらしく、現在でも仲良しの二人。
「そっか。どこ行ったんだろうね」
『気まぐれですからね。華鈴、お茶でもどうです? キョウカ殿から、良い茶葉を頂いたのです』
「行くよ。帰っても暇だし、たまには」
何の用事もないけれど、シキとお茶をするため、紅蓮荘に向かう。
響希君も僚君も来ればよかったのにな。
「お菓子、買っていこうか。何がいいかな」
『お饅頭とか、羊羮なんていいですね』
「いいね、それ」




