第玖話 結
『一幕目は気になるので見に来るのですが、二幕目は面白味がないんですよ。いつもここで帰っていますが、君たちは物好きなんですね』
シキが何かぶつくさ言っているけれど、気にしない。
『汰矢殿が審判でなければ、帰っていますよ』
気にしないようにしているけれど。
「この神守祭の二幕目で、何かあったの? いつものシキとは違う気がする」
『祝詞が終わり、忠誠を誓った後、ここは宴会場になるんです。皆が酒を飲み交わし、それが朝まで続く……』
「良いんじゃないの?」
『君たちはまだ、お酒を飲まないからわからないんですよ』
どういう事だろう。
「もしかしてシキさん、酒で失敗しました?」
桃麻が切り込んだ。
『そうなんです。昔々の話ですが、酔っ払い過ぎまして……。酒は好きなのですがね』
「シキが酒を飲むところを見たことなかったが、それが理由か?」
『はい』
「前に森の妖たちが集まって酒盛りしてたけれど、シキ、居なかったもんね」
『人間で言う、トラウマとやらですよ』
響希君と僚君も加わり、真相を深掘りする。
気づけば、そんなことを話しているうちに、祝詞が終わっていた。
『そろそろ帰りましょう。宴会が始まってしまう』
「大丈夫? シキ」
『えぇ。こちらから結界の外に出れますよ』
シキに案内され、結界の外に出た。
「でもまさか、シキにも失敗する事があるとはね」
『妖とて生きとし生けるもの。失敗はあります』
「俺、二十歳になったらシキと飲みたいな」
「あ、それ、僕も」
「俺も飲みたいです! シキさんと」
結界の外は変わらず賑わう、夏祭り会場。
皆、スマホを確認すると、元に戻っていた。
「もう少ししたら、花火か」
「そうだね。僕たちは見ていくけど、りんちゃんたちはどうする?」
「私たちも見ていくよ」
「シキさんはどうします?」
『花火なら、ご一緒します』
妖は皆、汐雨神社にいるのか、夏祭り会場に妖の姿はない。
落ち着いて、夏祭りを楽しめそう。
「あ、ぽっぽ焼き買ってない!」
「私も!」
ぽっぽ焼き。
それは、新潟県民が一度は目にし、口にしたことがあるだろう。
あ、それは過言かな。
茶色くて少し細長い、薄力粉と黒砂糖で出来た、お菓子。
えらいこっちゃ~!!
私と桃麻は、大慌て。
「慌てなくても、ぽっぽ焼きはなくならないよ。りんちゃん、笹本さん」
「あ、俺も買ってなかった! じいちゃんに頼まれてたんだった!」
冷静な僚君。
それに対し、響希君も私たち同様慌てている。
『ぽっぽ焼きは、新潟県民のお祭りの定番。ボクも食べたことがありますが、中々美味ですよね』
「シキさんもわかりますか!? 美味しいですよね」
『ボクも買って帰ります』
どこからか聞こえる打ち上げ花火の音。
色とりどりの花火が打ち上がっていく。
「綺麗だね」
「初めてだな。二人で観るのは」
「そうだね」
「あ、俺たちもいるぞ?」
「響希、シキ、二人から離れて観ようか」
『そうしましょう』
三人が離れて、私たちの近くにいなかったことに気づいたのは、私たちが帰る頃。
「華鈴が見ている世界が見れてよかった」
「どうだった?」
「やっぱり、羨ましい!」
「そっか。それにしても、何か忘れてるような……?」
「「あ、ぽっぽ焼き!!」」




