第玖話 伍
「『神守祭』? なんだそれ」
『汐雨神社に住まわれる、土地神の神守妖を決める祭りのこと。妖力、武力、心の穢れの有無等で、決めるのです』
「そういえば。さっき、汰矢に会ったよ。りんちゃんにもあったらしいけど」
『今年の審判は、汰矢殿みたいですしね』
「決まってるのか?」
『前回、神守を務めた妖が、担当する事になっているんですよ。汰矢殿はかなり優秀な妖でしたので、今回の審判に選ばれたのでしょう』
歩きながら、シキ、響希君、僚君が『神守祭』のことを話している間、私と桃麻は、別の話。
「えっ!? じゃあ、あの男の人、妖怪なのか?」
「うん。白い狐なの。私は、あの姿初めてだから、驚いているけど」
「なんで俺にも、姿が見えるんだ?」
「シキの妖力が強いから? だと思う」
これは私にはわからない。
シキならわかるかも。
「ねぇ、シキ」
『何ですか?』
前を歩くシキに声をかけて、聞いてみる。
もちろん、歩いたまま。
「桃麻が、今の姿のシキを見えているらしいの。理由わかる?」
『そうですね。ボクは人間の姿になると、妖力の影響で、妖眼のない人にも姿が見えてしまうのです』
「そうなんだ~。シキ、妖の中ではかなり強いの?」
『まさか。妖力が無駄にあるだけですよ』
前を向いたまま答えてくれたシキの言葉に、なんだか、悲しみが混じっているようだった。
「それにしても、僕たちどこに向かっているの?」
僚君の一言。
『「神守祭」の会場です。観に行ってみませんか?』
「行きたい! シキさん、俺も行っていいですか? 」
『もちろんです。会場に着き次第、見えるようにしましょう』
「はい! お願いします!」
***
「ここでやるの?」
『そうです。ここで行われますよ』
着いた先は、汐雨神社の裏手。
普段は木々が生い茂る、神秘的な場所のはずなのに、今は木々がほとんどない。
『もうすぐ始まる頃ですので、華鈴の恋人君。右腕を出して下さい』
「はい」
甚平の袖を捲り、右腕をシキの前に出した桃麻。
そこにシキは、筆を取り出し、文字とも絵とも言えない何かを書いた。
「これは、何?」
私は不思議に思い、聞く。
『これは、見えないモノを見るための術です。朝になればこの文字は消え、効力は一晩。ただし、人間の場合、文字が消えた後に能力が残る場合がありますのでご注意を』
「はーい」
簡単に返事をする桃麻だけど、私は、少し心配……。
ブォオー。ブォオー。ブォオー。
鳴り響く法螺貝の音。
開けた神社の裏手に、隠れていたのであろう妖たちが、姿を見せる。
『いよいよ、始まりますよ』




