第玖話 弐
「賑わってるね~」
日が暮れたお祭りの舞台、汐雨神社の広い境内と、商店街にはたくさんの人々と、妖の姿。
「うっわ~。妖がたくさん……」
ついつい見てしまう。
「羨ましいこと言うなよ~」
「ごめん。桃麻」
「まぁ、見えているのは、仕方ないけど」
「笹本! 雪村さん!」
おや?
何処からか、聞き慣れた声。
「何処かに、級長がいる……。あ、いた」
辺りを見渡す桃麻。
「さーさーもーと!」
手を振りながら、こちらに向かって来る声の主。
しかし、人の多さが行く手を遮っている。
「やあ、笹本。雪村さん!」
「こんにちは? こんばんは? 須崎さん」
桃麻と同じ学校で、同じクラスの須崎舜さん。
「いや~。まさか会えるとはね」
「俺も正直驚いてる。せっかくのデートを邪魔するつもりかぁ!?」
「それにしてもさ、妖怪がいるのかな? 悪寒がすごい……」
今の言葉、聞き捨てなりませんよ?
「須崎さん、妖の気配わかります? 」
「うーん。少しだけど、何かいるくらいですね」
「しゅーん! こんなところにいたの? あれ?」
えっ!?
この声は、まさか。
「雪村さん!?」
「吾妻さん!?」
何故、吾妻さんが?
しかも今、須崎さんを……。
***
「えっ、須崎さんと吾妻さん。付き合ってたの!?」
「そう。中二の頃からね」
「へぇ~。中学同じだったんだ~」
「雪村さんだって、彼氏さんとは幼なじみでしょう」
「そうなんだけどね」
桃麻と須崎さんが、射的がしたいからと、二人で対決中。
その間に私は、須崎さんと吾妻さんの馴れ初めを聞く。
ちょうど、座れるスペースがあって良かった。
「舜の方から告ってきてね。驚いたけど、まぁ、いいかなって」
「須崎さん。いい人そうだし、吾妻さんとお似合いだよ」
「でもまさか、雪村さんが、舜と知り合いだったとは。驚いてるよ? あたし」
「前にちょっとあって。桃麻の紹介で知り合ったの」
「それは、舜を問い詰めたら、聞けるかな」
「こらこら」
「冗談だよ」
すっかり日も暮れ、星がいくつか見えている。
「笑わないで聞いてね。舜、妖怪の放つ気っていうのかな。それにあたりやすいの。変な奴でしょ?」
「そんなこと、ないよ?」
「妖怪なんていないのに?」
吾妻さんは、妖を見えないんだ。
須崎さんは妖が放つ気に、あたりやすい。
その事を、理解できないのは、見えていないから。
「妖怪はいるよ。今も、そこら中を歩いていたり、飛び跳ねていたり」
「どうして、そんなことが言えるの?」
それは。
それはね、吾妻さん。
「私、小さい時から妖が見えるの。今もそう。ずっと見えてる」
「嘘でしょ?」
「本当だよ。それが原因で、いじめられてた時期もあったの。でも、桃麻は理解してくれてて、俺も妖怪を見たいって」
「良い彼氏さんだね」
「だからさ、吾妻さん。妖怪はすぐ側にいるんだよ。須崎さんの体質は、私の方で調べておくから、須崎さんのこと、理解してあげてね」
「見える人に言われたら、そうするしかないかな~」
「何々~? 二人で何話してたの?」
終わったようで、私たちの元に来た桃麻と須崎さん。
「まさか、みずき。俺の愚痴を?」
「そのまさか。雪村さんに、溜まりに溜まった舜の愚痴を聞いてもらってたの」
「なんだと~!?」




