第捌話 結
『だって、だって! ピーちゃんは、ボクと同じなんだもん!』
白牙の言葉を、理解できない。
「どういう事なの?」
『ボクもピーちゃんも、親無しなんだよ!?』
かなり興奮している様子の白牙。
ピーちゃんは、もう、飛び立つ準備ができている。
パタパタからゆっくり、バサバサに変わる羽音。
『ピギャア!』
甲高い声と共に、水の間に吹き荒れる強風。
あらゆる物が飛ばされ、空いている窓の前にいる白牙は、風に耐えきれず、バランスを崩した。
『ピーちゃん!! 行かないで!』
白牙は必死。
しかし、その努力は空しく終わる。
『ピギャア!』
再び甲高い声。
羽音を残し、カヌの雛は、青い空に飛び去って行った。
***
『ピーちゃん……』
カヌの雛を失ったショックで、白牙はかなり落ち込んでいる。
「白牙、元気だしなよ」
『お茶でも飲んで、落ち着きましょう』
私とシキの慰めの言葉は、白牙には届いていない模様。
「シキ。白牙が言ってたけど、親無しって、どういうこと? 白牙にね、以前話を聞いたことがあったんだけど、その時はいたはずなの」
『白牙は、確かに親無しです。白牙が華鈴に話したことは、ボクが白牙に教えた事だと思われます』
「白牙のご両親を知ってるの?」
『ええ。白牙が生まれる少し前、ここから少し離れた地で、白牙のご両親と知り合いました』
詳しく知りたい。
だって、白牙は私の式神だから。
「教えて。白牙のご両親のことを」
『良いですよ。しかし、白牙。きみはよろしいですか?』
シキは白牙に視線を移し、聞く。
『いいよ。勝手にして』
まだ落ち込んでいる白牙は、なげやりな返事。
『白牙のご両親の名は、弦牙と宵尾。樽沼という地で、三ツ貫という名の陰陽師に仕えていました』
『おお! 三ツ貫殿か。懐かしき名だ』
『静かにしていろ、妙月。華鈴が聞いているんだぞ』
妙月様は、三ツ貫という陰陽師を知っている様子。
だけど、キノカサに遮られ、妙月様は肩を落とす。
「シキ、続けて」
『三ツ貫殿は、弦牙殿と宵尾殿を、番式として使役されており、力のお強い陰陽師だったのです。弦牙殿も宵尾殿も、三ツ貫殿さながら。雪が降るある日、宵尾殿は白牙を身籠りました。弦牙殿も宵尾殿も、三ツ貫殿も喜びました。しかし、幾月後。三ツ貫殿が何者かに呪詛をかけられ、命を落としました。ちょうどその日です。白牙が生まれたのは。主を失った弦牙殿と宵尾殿は、呪詛返しを行う為、知り合ったばかりのボクに、白牙を託しました。呪詛返しはかなり危険。そして、行った呪詛返しは失敗。白牙のご両親は命を落としました』
まだ少し興奮気味の妙月様が、シキの後に話してくれた。
『三ツ貫殿の最期の言葉は、番式に向けられていたらしい。「いつかお前たちの子が、続く世で式神となることを祈る」だったな。三ツ貫殿の式神にも会ったことがあるが、とても立派な式神であった』
妙月様の言葉を聞き、こちらを向いた白牙。
その目は涙ぐみ、赤くなっていた。
『もうすぐお盆ですし、樽沼の地に行ってみては? 白牙、きっとご両親に会えますよ?』




