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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第捌話 カヌの卵
60/130

第捌話 伍

 あれから一週間。

 結界が張られている紅蓮荘(ぐれんそう)なら、卵を守れるはずだと思い、カヌの卵を預けている。


『華鈴! 行こ! 孵化してるかも知れないよ』

「慌てないで。そんなに早く孵化するわけないでしょ」


 宿題を終わらせたいから、二日くらい紅蓮荘に行っていない。

 白牙(びゃくが)を喚んでみたものの、すぐにカヌの卵が気になるよう。


「書物にもあったよ。卵が産卵から十日以内に……。ん?」


 まてまて。十日以内?


「早いね!? 孵化してたらどうしよ!! 行こ、白牙!」

『う、うん』


 宿題なんて、やってる場合じゃない!

 カヌの孵化の方が、大事!!

 こうして、部屋を飛び出し、家を飛び出す。


『待って。華鈴。速い……』


 ***


「こんにちは! シキ、キノカサ、妙月(みょうげつ)様!」


 紅蓮荘のドアを開くや否や、木の間に直行。


『どうした、華鈴?』


 窓辺に置かれ、陽の光に当たっているカヌの巣。

 その横には、キョウカ様が持って来てくれた、花束が花瓶に入って置かれている。

 今、木の間には、キノカサしかいない。


『ハァハァ。追い付いた……』


 背後から聞こえた、白牙の声。

 もしかして私、置いてきてしまったんだ。


「あ、ごめん。白牙」

『ひどいよ!? 置いていくなんてさ!』


 白牙は、かなりご立腹の様子。


『それで、どうしたんだ?』

「カヌの卵を見に来たの。そろそろ孵化でしょ?」

『そうだな。かなり大きくなっている。そろそろだろ』



 二日前、書物を読んだとき、カヌについて書かれていたのは一ページ程。


『カヌの成鳥は、烏のような姿で、大きさもほぼ同じ。尾は長く、目は(あお)鶏冠(とさか)があり、金色。孵化し、身体が乾くとすぐに飛び立つ。神獣(しんじゅう)の一種』


 ほんのこれだけだった。


 私たちが読んだ書物は、『妖怪大辞典』で、作者は不明。

 ある程度の妖について、多く書かれているはずなのに、カヌに関しては、ほんの一ページ。

 本当に、不明な点が多い神獣なのだろう。


 カヌの巣に近づいて、様子を観察。

 白牙も見たいらしく、服の裾を引っ張っている。

 仕方なく、白牙を抱っこ。


『少し大きくなってるね』

「ダチョウの卵よりも、少し大きいくらいかな。テレビでしか見たことないから、わからないけど」


『ただいま。キノカサ。おや、華鈴。来てましたか』


 外からシキが戻って来たよう。


「こんにちは。シキ」

『ここまで大きくなれば、本日中にも孵化でしょう』

『シキ。それ、本当!?』


 シキの言葉に反応して、白牙は私の腕の中でバタバタ。


『華鈴! 今日はずっと、ここにいよう!』


 やっぱり、そう来たか。


「いいけど、一回家に行ってきてもいい? 宿題持ってくるから」

『じゃあ、ボクはここで待ってる!』

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