第捌話 伍
あれから一週間。
結界が張られている紅蓮荘なら、卵を守れるはずだと思い、カヌの卵を預けている。
『華鈴! 行こ! 孵化してるかも知れないよ』
「慌てないで。そんなに早く孵化するわけないでしょ」
宿題を終わらせたいから、二日くらい紅蓮荘に行っていない。
白牙を喚んでみたものの、すぐにカヌの卵が気になるよう。
「書物にもあったよ。卵が産卵から十日以内に……。ん?」
まてまて。十日以内?
「早いね!? 孵化してたらどうしよ!! 行こ、白牙!」
『う、うん』
宿題なんて、やってる場合じゃない!
カヌの孵化の方が、大事!!
こうして、部屋を飛び出し、家を飛び出す。
『待って。華鈴。速い……』
***
「こんにちは! シキ、キノカサ、妙月様!」
紅蓮荘のドアを開くや否や、木の間に直行。
『どうした、華鈴?』
窓辺に置かれ、陽の光に当たっているカヌの巣。
その横には、キョウカ様が持って来てくれた、花束が花瓶に入って置かれている。
今、木の間には、キノカサしかいない。
『ハァハァ。追い付いた……』
背後から聞こえた、白牙の声。
もしかして私、置いてきてしまったんだ。
「あ、ごめん。白牙」
『ひどいよ!? 置いていくなんてさ!』
白牙は、かなりご立腹の様子。
『それで、どうしたんだ?』
「カヌの卵を見に来たの。そろそろ孵化でしょ?」
『そうだな。かなり大きくなっている。そろそろだろ』
二日前、書物を読んだとき、カヌについて書かれていたのは一ページ程。
『カヌの成鳥は、烏のような姿で、大きさもほぼ同じ。尾は長く、目は碧。鶏冠があり、金色。孵化し、身体が乾くとすぐに飛び立つ。神獣の一種』
ほんのこれだけだった。
私たちが読んだ書物は、『妖怪大辞典』で、作者は不明。
ある程度の妖について、多く書かれているはずなのに、カヌに関しては、ほんの一ページ。
本当に、不明な点が多い神獣なのだろう。
カヌの巣に近づいて、様子を観察。
白牙も見たいらしく、服の裾を引っ張っている。
仕方なく、白牙を抱っこ。
『少し大きくなってるね』
「ダチョウの卵よりも、少し大きいくらいかな。テレビでしか見たことないから、わからないけど」
『ただいま。キノカサ。おや、華鈴。来てましたか』
外からシキが戻って来たよう。
「こんにちは。シキ」
『ここまで大きくなれば、本日中にも孵化でしょう』
『シキ。それ、本当!?』
シキの言葉に反応して、白牙は私の腕の中でバタバタ。
『華鈴! 今日はずっと、ここにいよう!』
やっぱり、そう来たか。
「いいけど、一回家に行ってきてもいい? 宿題持ってくるから」
『じゃあ、ボクはここで待ってる!』




