第捌話 肆
「ケホケホ。埃、スゴすぎだよ……」
『しばらく掃除してませんからね。申し訳ない』
『まったく。シキは、こういうところが、抜けてるんだよな』
『キノカサにまで言われるとは』
私、白牙、シキ、キノカサで、書庫の掃除。
「妙月様は?」
『カヌの卵をみてもらっている。誰かしらみてないと、妖に喰われてしまう可能性がある』
「そっか。卵を狙う妖がいるんだもんね」
『結界があるとはいえ、油断はできませんしね』
本棚の上の埃を落とし、床を掃いて拭いて。
掃除がメインになっている気がするけど、掃除を終わらせてからゆっくり、カヌの書物を見つけよう。
『シキ殿ー! シキ殿ー!』
階下から聞こえる妙月様の声。
慌てたような声ではないが、一体どうしたんだろう。
『妙月様、何かあったんじゃない?』
「まさか、卵が割れたとか?」
『そんなことはないと思いますが……』
『妙月の声を聞く限り、慌てた様子ではない。大丈夫だろ』
私たちは掃除する手を止めて、階下に向かうと、玄関先には桔梗の妖、キョウカ様が手に何か白い筒状のモノを持ち、立っていた。
「キョウカ様!」
『お久しぶりですね。お嬢さん』
間違いなく、キョウカ様だ。
『キョウカ殿。ご無沙汰しております』
『こちらこそ、先日はお世話になりました』
シキも、キョウカ様と挨拶を交わす。
『あの方は陰陽師ですか?』
『封魔師なのですよ。妙月殿と申されるのです。ご存知ですか?』
『いえ。しかし、風の噂で、聞いたことがある気がします』
『立ち話はなんですし、どうぞ中へ』
そのまま私たちは、水の間で話すことにした。
『その卵は?』
「カヌの卵です」
『カヌ? もしかして、神獣のカヌ?』
「ご存知ですか? キョウカ様! 」
『妖で知らぬ者はおりません。見た者に幸運をもたらすとか』
『それで、キョウカ殿。本日はどのようなご用件で?』
シキが話を変える。
キョウカ様がここに来たのには、何か理由があっての事だろう。
また、依頼かもしれない。
『失礼いたしました。先日のお礼をしたく、参りました』
「お礼なんて、そんな! 私たちは、いつも無償でお受けしています。返礼や見返りは求めていません」
『では、こちらの花束を受け取って頂けますか? 小さき者たちが集めた花なんです』
キョウカ様が手にしていた白い紙に包まれていたのは、色とりどりの花束。
「キレイ……」
『キョウカ殿、ありがとうございます。お気持ちと、この花束は受け取らせて頂きます』
『では、わたくしはこれで。お嬢さん、貴女のご友人にもよろしくお伝え下さい。失礼致します』




