第捌話 壱
八月に入り、台風の影響なのか、今日は大荒れの天気。
何をするにも、億劫になってしまう。
『華鈴。今日は外、荒れてるね』
なんとなく、何の用もなく白牙を喚んでみた。
ベッドの上から窓の外を眺めて、お互いにため息。
「八月になってすぐに、台風の接近だもんね。今日は、森にも行けないし」
『何かして遊ぼ!!』
しっぽをフリフリしながら、白牙は目を輝かせている。
「何かって、何?」
『うーん。華鈴が決めていいよ』
何も用がないのに、白牙を喚んでしまっている手前、遊べるものを考えなきゃ。
白牙がわかりそうな遊び……。
「白牙、トランプわかる?」
『わかるよ。何する? ババ抜き? 七並べ? ドローポーカーもいいね』
「わかるの!?」
『知ってるよそれくらい』
なんですと!?
「でも白牙は妖犬だから、カード持てないね」
『大丈夫。人間の姿になればいいから』
「人の姿になれるの!? しかも、ドローポーカー知ってるの!?」
突然の衝撃告白。
ドローポーカーを知ってて、人にもなれるとは。
恐るべし。
『なれるよ。斑牙姐さんも、黒牙もなれるんだよ。シキもなれるはずだけどね』
「スゴいね。妖は」
そんなわけで、トランプで遊ぶ事にした。
『今、人間の姿になるね。見てていいよ』
ベッドから飛び降り、床に降り立つ。
白牙は、フゥと息を吐き、目を瞑ると、身体の周りを煙が包み込んだ。
煙はあっという間に消え去り、白牙がいた場所には、幼顔の同い年みたいな、白いサマーパーカーの男の子。
『どうかな? これがボクだよ』
声は変わらず、白牙のまま。
「その服はどうしたの?」
『これ? これはねぇ、時代に合わせて変幻自在なのだ~』
私の部屋を走り回る人間白牙は、とてつもなく可愛い。
「その姿、妖が見えない人でも見えるの?」
『見えないよ。妖眼の持ち主にしか見えない』
「なんだか、もったいないよ」
『そ、れ、よ、り! トランプしよ! ポーカーしたい!』
グイと私に近づく人間白牙。
ドギマギしてしまいそう。
「そうだね。始めよっか」
***
ポーカー。
それは、知略と戦略の頭脳戦。
私たちが遊ぶポーカーは、チップの賭けを行わないタイプの、健全なドローポーカー。
公式ルールでは、交換は一回だけだけど、チップを賭ける部分を省略したから、交換は二回までにした。
『う~ん』
お互い五枚のカードを持ち、役を揃えるカードゲーム。
白牙は、カードを交換するかどうかで、お悩み中。
「白牙、ポーカーフェイスだよ?」
『わかってるよ~。だけどさ~』
中々決められないのか、ポーカーフェイスができていない。
『ノーチェンジ。華鈴、いいよ』
交換しない方向で決めた様子。
では、私は二枚交換。
うんうん。
中々いいね。
二回目の交換。
『ノーチェンジ』
再び、交換しないようですね。
さては、強い役が揃っているね?
「私もノーチェンジ」
では、手札をオープン。
私は、スペードの八、ハートの八と七、クラブの八と七の、フルハウス。
白牙は、スペードの九、十、J、Q、Kのストレートフラッシュ。
「うわぁ! 負けたぁ!」
『やった! 勝った!』
よっぽど嬉しかったのか、ピョンピョン飛び回る白牙。
「あれがポーカーフェイスだったのぉ!?」
『上手かったでしょ~!』
ドヤッ。じゃないよ!!
なんだか悔しい!
「そもそもなんで、ポーカーを知ってるの?」
『響希から教えてもらったの』
「響希君が?」
『そう。僚も一緒に教えてくれた! 斑牙姐さんと、黒牙とシキとボクで、やったこともあるんだよ』
そんなことがあったとは。
私も小さい時に、従兄弟のお兄ちゃんから教えてもらったけど、あの時は、勝ったり負けたりしてたなぁ~。
『もう一回やろ!』
「いいよ」
気付けば、朝から降り続いていた雨が、少し弱まっていた。




