第漆話 結
「どうやって祓うの?」
「ん? 簡単だろ。黒牙の能力を使う」
「そっか。りんちゃん、黒牙の能力を知らなかったね」
なんだろう。
黒牙にすごい能力でもあるのかな。
「黒牙は、祓いの光を放てる。その力は妖を祓えるが、妖力の弱い妖が当たってしまうと、姿形が消えてしまう」
「恐ろしいね」
「影響は妖にしかないから、あの木は無事に残る。それだけも良いだろ」
おもむろに、ポケットから紙人形を取り出した響希君。
「黒牙、召来」
響希君の手から滑り落ちた紙人形。
煙が立ち込め、その中から黒い妖犬、黒牙が現れた。
『何の用だ?』
「あそこに木があるだろ。その木に妖が憑いてる。祓って欲しい」
『ああ。あれか』
黒牙は振り向き、カエデの木を確認。
『あの木、かなり弱ってるな。光に耐えられないぞ』
「耐えられない? 光は、妖にしか効かないはずだろ?」
『力をかなり吸われている。このままでは朽ち果てる』
「あの木は残したい。なんとかならないか?」
『少し弱めてやってみるが、どうなっても知らんぞ』
離れろ。と、響希君に言われ、家の中に入った私たち。
黒牙はカエデの木に近づいている。
すると、黒牙の身体が赤黒く光り出した。
「あれが、祓いの光?」
「ああ。何度見ても、グロいな」
「グロいより、怖すぎるよ」
家の中で、響希君と話す。
あれ? 誰かいない?
「ところで、僚はどこ行ったんだ?」
「多分、二階じゃないかな」
「ここで待っていれば良いものを……」
「小さい妖たちと話したいんだよ。きっと」
グォァ! グゥァ! と、低く響く声。
突風でも吹いたのかと思ってしまうほどの風が、家の窓をガタガタと揺らす。
「な、何!?」
「あの木に憑いていた妖だ。驚くことはない」
「私、初めてだよ!?」
「そうだったな」
驚きが隠せない私に比べ、響希君はかなり冷静。
『終わったぞ』
黒牙が家の中に入ってきた。
『憑いていた妖は祓った。華鈴、白牙を呼んでくれないか。あの木を清めたい』
「わかった」
ポケットから紙人形を取り出し、白牙を呼び出す。
「白牙、召来」
手のひらから滑り落ちる紙人形。
煙が立ち込め、白い妖犬の姿が現れた。
『よーく寝た。おはよ。華鈴』
いつものことながら、のんきな性格。
大きな欠伸をひとつ。
「寝起き早々で悪いんだけど、あそこに木があるでしょ。あの木を清めて欲しいの」
カエデの木を指差して、白牙に教える。
『あの木だね。いいよ』
ピョンピョンと、お庭に飛び出した白牙。
カエデの木に向かって一目散、駆け出した。
***
「終わったね。これで帰れる」
「案外、あっさりだったな」
白牙がカエデの木を浄め終わり、これで一件落着。
僚君も二階から降りてきたみたい。
「僚、二階で何してたんだ?」
「怪我してた妖がいたから、その手当て」
「そうだったんだ。斑牙の能力って、すっごく役立つよね」
「癒し系の姉御なんだって。前に黒牙が言ってた」
「聞いたことないぞ? 俺は」
玄関を出て、預かっていた鍵をかける。
「須崎さんに連絡しなきゃ」
「あれ? 連絡は、彼氏さんに。でしょ?」
「そうだけど、須崎さん宛ての連絡だよ」
「幼なじみかぁ。いいな」
「響希君!?」
このあとキョウカ様と小さな妖たちは、祥一郎さんの命日を、ともに過ごしたのだろう。




