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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第漆話 小さき者の行方
55/130

第漆話 結

「どうやって祓うの?」

「ん? 簡単だろ。黒牙(こくが)の能力を使う」

「そっか。りんちゃん、黒牙の能力を知らなかったね」


 なんだろう。

 黒牙にすごい能力でもあるのかな。


「黒牙は、祓いの光を放てる。その力は妖を祓えるが、妖力の弱い妖が当たってしまうと、姿形が消えてしまう」

「恐ろしいね」

「影響は妖にしかないから、あの木は無事に残る。それだけも良いだろ」


 おもむろに、ポケットから紙人形を取り出した響希君。


「黒牙、召来(しょうらい)


 響希君の手から滑り落ちた紙人形。

 煙が立ち込め、その中から黒い妖犬、黒牙が現れた。


『何の用だ?』

「あそこに木があるだろ。その木に妖が憑いてる。祓って欲しい」

『ああ。あれか』


 黒牙は振り向き、カエデの木を確認。


『あの木、かなり弱ってるな。光に耐えられないぞ』

「耐えられない? 光は、妖にしか効かないはずだろ?」

『力をかなり吸われている。このままでは朽ち果てる』

「あの木は残したい。なんとかならないか?」

『少し弱めてやってみるが、どうなっても知らんぞ』


 離れろ。と、響希君に言われ、家の中に入った私たち。

 黒牙はカエデの木に近づいている。

 すると、黒牙の身体が赤黒く光り出した。


「あれが、祓いの光?」

「ああ。何度見ても、グロいな」

「グロいより、怖すぎるよ」


 家の中で、響希君と話す。

 あれ? 誰かいない?


「ところで、(つかさ)はどこ行ったんだ?」

「多分、二階じゃないかな」

「ここで待っていれば良いものを……」

「小さい妖たちと話したいんだよ。きっと」



 グォァ! グゥァ! と、低く響く声。

 突風でも吹いたのかと思ってしまうほどの風が、家の窓をガタガタと揺らす。


「な、何!?」

「あの木に憑いていた妖だ。驚くことはない」

「私、初めてだよ!?」

「そうだったな」


 驚きが隠せない私に比べ、響希君はかなり冷静。



『終わったぞ』


 黒牙が家の中に入ってきた。


『憑いていた妖は祓った。華鈴、白牙(びゃくが)を呼んでくれないか。あの木を清めたい』

「わかった」


 ポケットから紙人形を取り出し、白牙を呼び出す。


「白牙、召来」


 手のひらから滑り落ちる紙人形。

 煙が立ち込め、白い妖犬の姿が現れた。


『よーく寝た。おはよ。華鈴』


 いつものことながら、のんきな性格。

 大きな欠伸(あくび)をひとつ。


「寝起き早々で悪いんだけど、あそこに木があるでしょ。あの木を清めて欲しいの」


 カエデの木を指差して、白牙に教える。


『あの木だね。いいよ』


 ピョンピョンと、お庭に飛び出した白牙。

 カエデの木に向かって一目散、駆け出した。


 ***


「終わったね。これで帰れる」

「案外、あっさりだったな」


 白牙がカエデの木を浄め終わり、これで一件落着。

 (つかさ)君も二階から降りてきたみたい。


(つかさ)、二階で何してたんだ?」

「怪我してた妖がいたから、その手当て」

「そうだったんだ。斑牙(はんが)の能力って、すっごく役立つよね」

「癒し系の姉御なんだって。前に黒牙が言ってた」

「聞いたことないぞ? 俺は」


 玄関を出て、預かっていた鍵をかける。


須崎(すざき)さんに連絡しなきゃ」

「あれ? 連絡は、彼氏さんに。でしょ?」

「そうだけど、須崎さん宛ての連絡だよ」

「幼なじみかぁ。いいな」

「響希君!?」


 このあとキョウカ様と小さな妖たちは、祥一郎(しょういちろう)さんの命日を、ともに過ごしたのだろう。

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