第漆話 肆
「何も気配が無いね」
「前に来たときは、いくつかあったのに……」
裏庭に出てみると、この家の近所の方々が手入れをしていることがわかる。
前に来たときと何かが変わった様子はない。
何故、小さき者たちが消えているのか。
「どうだ? そっち、何かあったか?」
上の方から、響希君の声が聞こえた。
そっか。
響希君、二階にいるんだった。
「何もなーい。上から見た感じは、どう?」
顔を上げ、答える。
「こっちからも、何もない。気配も感じられない」
二階から見ても何もない。
どういう事だろう。
『これこれ。娘よ』
何だろ。
私の服の裾を引っ張られてる。
そして、すごく小さな声。
「ここに、何かいるよ!」
大声で、皆に伝える。
『まて、娘。大声をだすな。わたしは、そなたとだけ、話しをしたいのだ』
私にだけ?
見ると、薄いピンクの着物を着た、ものすごく小さな妖。
「どうしたの? りんちゃん」
僚君が側に来た。
なんとか誤魔化さなければ。
「私の勘違いだったみたい。虫かな」
「そっか」
「どうした。何かいたのか?」
「私の勘違いだったみたい。ごめんね」
「何かあったら、すぐに教えてくれ!」
「わかった!」
響希君も下に降りてきて、一緒に裏庭の捜索。
二人と少し距離を置いた辺りで、小さな妖に声をかける。
「それで、私に何の用?」
『そなた、キョウカ様を知っているな?』
「キョウカ様?」
『話してたではないか。あのお方と』
キョウカ様なんて、私……。
あ、もしかして。
「もしかして、桔梗の妖さんのこと?」
『そうだ』
小さな妖は頷く。
「話を戻すけど、何の用なの?」
『この家から今すぐ立ち去れ。それだけだ』
立ち去れ?
それは、一体どうして?
「どうして?」
『キョウカ様は、とてもお美しく、お優しい。この家の主と恋仲でもあった』
「その事と私たちに、何の関係があるの?」
小さな妖は、やれやれと言うような表情を向けてきた。
『聞いとらんのだな。今日はな、その主の命日なのだ』
命日。
この家の最後の主さんの。
「もしかして、毎年、あなたたちは、姿を消しているの?」
『まさか。わたしたちは、毎年この家にいるぞ。キョウカ様とともに、その命日を過ごしている』
「それなら、なんで今年はいないの?」
うつむく、小さな妖。
『妖にも事情というものがある』
「わけあり?」
『ああ。そう言えば、何故この家に来た? この前も来ていたようだが?』
「キョウカ様に頼まれて来たの。小さな妖が消えているって」
『お気づきだったのか……』
「今日が、主さんの名日なら、今日中に解決させたい!」
『お前たちなら、出来るのか?』
「多分ね。約束できるかわからないけど」




