第漆話 壱
今日は一学期終業式。
と、言うことは、明日から夏休み~!
「これから。楽しみであろう、通知表を配る。名簿順に取りに来るように」
担任の諸岡先生の言葉に、ガヤガヤしだす教室。
私の名簿は後の方だから、かなり余裕を持つ。
「はぁ。ま、こんなもんか」
隣の席の吾妻みずきさん。
ため息を漏らしてる。
また一人、また一人と待っている間に、私の番が来た。
ドキドキが止まらない。
先生のもとにいき、通知表を受けとる。
席に着くまで通知表を見れない。なんて、そんなことはないんだけど。
「雪村さん、どうだった?」
吾妻さんが話しかけてきた。
「うーん。まあまあかな。良くもなく悪くもなく」
「あたしも。赤点が無かっただけ、良かった」
HRが終わり、家路につく。
生徒玄関で靴を履き替えるために、下駄箱の扉を開けると、一枚の白い紙がローファーの上にのっていた。
『紅蓮荘に来てほしい』
この字は、響希君だ。何の用だろう。
あれからしばらく、紅蓮荘も霞ヶ森も避けている。
「二人と仲直りしてない……」
変な意地を張ってた。
冷静になってみれば、あれで正しいとは言えなくても、間違っていたとも言えない。
二人は謝ってくれてたし、あの時の私は許してなかった。
何があるのかはわからないけど、とりあえず。
***
久しぶりに来たけど、やっぱり落ち着く。
外の気温はかなり高くて暑かったけど、森に入った瞬間から涼しさを感じる。
太陽の光が、森の木々に遮られているせいだで、ここは天然のクーラー。
『華鈴だぞ。華鈴が来た』
『シキに伝えろ。華鈴が戻ってきた』
森に住む妖たちが私に気づいて、何やら話している。
「久しぶりだね。皆」
聞こえたかな。
霞ヶ森を進んだ先の、朧池の畔。そこに、紅蓮荘は建っている。
ドアを開け……。
ギギギ。
ん? 立て付け悪くなった?
ドアを開けると、とても静か。
「誰もいないじゃん……」
『お、華鈴。こっちだ』
『お待ちしておりましたよ。さぁ、こちらへ』
響希君の式神の黒牙と、僚君の式神の斑牙が、一階の木の間から出てきた。
「皆、木の間にいるの?」
『はい。依頼主もいらしてますよ』
黒牙と斑牙に連れられ、私は『木の間』の扉をゆっくりと開ける。
「お邪魔しまーす」
『この声……。もしかして貴女、この前の、お嬢さん?』
ん?!
この声、聞き覚えが……。
「もしかして、桔梗の妖さん!?」
しまった。
ゆっくり開けてたのに、驚きのあまり勢いよく。
「な、何故、貴女がここに?」
『少し、ご相談したく参りました』
「何かあったんですか? あの家に」
木の間にいるシキや響希君、僚君をよそに、話を進める。
『家自体には何も。ただ、小さき者たちが次々と、消えているのです』




