第陸話 伍
「それで、何かいましたか?」
「二階に、人型の女妖がいました。でも、害をなす妖ではないようなので、ご安心ください」
「それは良かった。ありがとうございました。雪村さん」
「いえ。お役に立てて良かったです」
玄関で靴を履きながら、須崎さんと話す。
あ、桃麻は、完全に蚊帳の外。
「俺も、話し聞きたいんだけど!?」
「あ、忘れてた。ごめん、桃麻」
「酷くないか!?」
とりあえず妖がいたことで、須崎さんの依頼は解決。
空き家をあとにして、帰ることにしたけど、なんだろう。
何かが気になる。
***
「俺さ、華鈴の妖怪が見える能力が、羨ましかったんだよ」
「どうしたの? 急に」
桃麻の一言に、驚きを隠せない。
「華鈴は、俺が見てる世界と、少し違う世界を見てるだろ?」
「そんなに違ってはないと思うけど……」
「違うよ。俺は妖怪が見えない。だけど華鈴は見える。人外の妖怪と話したりするんだろ? 楽しそうじゃん。小中の頃、華鈴がいじめられてるとこを見て、思ったんだ。『なんで、妖怪が見えるだけで、華鈴をいじめてんだ』って。『羨ましいって思わないのか』って」
何が言いたいのだろう。
「だから、助けてくれたの?」
「うん。あー! くっそハズいな」
それもあるし。と、一言前置き、続く。
「それもあるし、華鈴のこと、ずっと……」
徐々に赤らんでいく、桃麻の顔。
「ずっと、好きだった。今もこの気持ちは変わらない」
「桃麻が? そんな……。桃麻が……」
「驚かせたよな。でも、本当のことだから。華鈴に、好きな人がいなければ、俺と、その。なんて言うか……」
顔が熱いから、きっと、赤らんでいるだろう。
暑さのせいじゃない、身体中が、熱くなるような。
「桃麻……」
桃麻とは、家が近所で、小さい時からいつも遊んでいた。
異性として見ていなかった、物心つく前から。
いじめられてた小中学校時代に、助けてくれた。
異性として見るようになってからも、桃麻とは親友でいたい。
恋心を抱くことは、ないと思っていたのに。
桃麻は違ったんだね。
この熱さが恋心なら、私は、桃麻が好き。
好き以上に、大好きなのかもしれない。
「桃麻の気持ちは、嬉しいよ。私は、桃麻を親友として好きだし、これからも、会えそうな日は会いたい。また一緒に遊びたい。この気持ちが恋心なら、私も桃麻が好き、です」
「それじゃあ……」
「よろしくお願いします」
家路は長いはずなのに、なんだか短く感じられる。
繋いだ手は、これまでの思いをのせているかのよう。
「じゃ、ここで。またな」
「うん。またね」
桃麻は、家まで送ってくれた。
「あ、そうだ。また明日、あの家に行きたいの。須崎さんに連絡とってもらえないかな。気になることがあって」
「わかった。級長に言っとく」
「桃麻もおいでよ」
「良いのか? 危ないんじゃ?」
「今日会った妖から、危険な気配は無かったから、大丈夫」
「そっか。明日もどうせ暇だし、俺も行く」




