第陸話 肆
「おじゃましまーす」
鍵を開け、中に入る。
「影が見えたんですよね? それは、一階と二階、どちらでしたか?」
「一階。あ、でも、二階の方でも見えました」
「そうなんですね。では、一階から調べてみます。二人は玄関にいてください。何かあったとき、すぐ逃げることができるように」
「えー。俺も調べたい!」
桃麻の一言に、私は反論。
「ダメ。危ない妖怪だったらどうするの?」
「すぐ逃げれば良い! それに、華鈴がいるんなら、大丈夫だろ!」
「そんな簡単じゃないんだよ」
ムスっとした顔を向けてくる桃麻。
「笹本。幼なじみさんが言ってるんだから、ここで待っていよう」
「級長だって、気になるだろ!? たとえそれが、危険だとしても!」
「気になるけど、我慢する」
「級長までぇ~」
須崎さんに桃麻を頼んで、私は中へと進んでいく。
お茶の間や、仏間。台所に、居間。
他にいくつか部屋があり、その全てを確認。
「白牙、召来」
私だけじゃキリがないから、白牙を呼んで、一緒に妖を探す。
『ふわぁ。よく寝た。あ、華鈴。何か用?』
白牙を呼び出すとすぐに、大きな欠伸をひとつ。
「一緒に、妖を探してほしいの。この家のどこかにいるみたいなんだけど……」
『確かに、気配は感じるね。いくつかの気配を感じるけど、気のせいかな』
「いくつも?」
『うん。力の強い者と弱い者が、一緒に』
「かりーん。何かいたのかぁ?」
「やめなよ、笹本」
玄関から、桃麻が叫んでいる。
それを止める須崎さんの声も聞こえた。
「一階の方にはいないみたい。二階を見てみるね」
玄関に向かって一言残すと、廊下の奥にある階段に向かう。
『上の階に、何かいるよ。強い気配を感じる』
「悪気は感じないから、大丈夫だよね」
『能ある鷹は爪を隠すって言うでしょ。気をつけて』
一段一段、階段を上がっていく。
二階に着くと、なんだか不思議な感じがした。
何故って、部屋が、大部屋一つだけだから。
よく見ると、窓辺佇む青紫色の着物を着た女妖。
「こんにちは。この家には、貴女だけなの?」
声をかけると、私たちに気づいてなかったようで、身体をビクッとさせた。
『貴女方は、どなた?』
優しく、おっとりした話し方。
「この家に遊びに来ました。この家には、貴女だけ?」
『いえ。小さき妖たちと共に』
「その妖たちはどこへ? 下の階には、いませんよね?」
『裏庭にいますよ。彼らは、裏庭が好きなんです』
「そうでしたか。貴女は、一緒に行かないんですか?」
『わたくしは、ここにいるのが、好きなんです。こうして外を見ているのが、好きなんですよ』
女妖の周りから、優しく温かなオーラがにじみ出ている。
「華鈴、大丈夫かぁ!?」
「大丈夫! そっち行くから、待ってて!」
階下から響いてくる桃麻の声。
『あら、お友達? わたくしにかまわず、お行きなさいな』
「また来ますね」




