第陸話 参
土曜日。午前九時。
待ち合わせは、この前のファミレス。
「あっついな~。それにしても、来ないな、級長」
何故か、桃麻もついて来た。
「桃麻、妖怪がいるかもしれないんだよ? 危ないよ?」
「それは華鈴も同じだろ? 妖怪が見えるってことは、華鈴は妖怪に目をつけられやすい!」
「だから、ついて来たの?」
「興味本意に決まってんだろ!!」
ドヤっ。
いや、そんなドヤ顔をされましても……。
と、言いたいけど、我慢我慢。
「ごめーん! 遅くなった!」
声が聞こえてくる方を見ると、須崎さんが、走ってくる。
「ごめんなさい! 寝坊しちゃって。本当、申し訳ない!」
深々と頭を下げられた。
「お気になさらず。時間はまだ、たくさんありますし!」
「級長も、寝坊する事あるんだな!」
「と、とにかく行こうか!」
***
「ここか?」
「大きな一軒家ですね」
「そう。で、あっちが俺の家」
須崎さんの案内で、例の家に到着。
「妖怪の気配ですけど、いますね。かなり強い念を感じます」
「華鈴、スゲー! 妖怪が見えるだけじゃなかったんだぁ!」
「俺の勘違いじゃなかったって事ですよね!」
なんだろう。
強い念だけど、悪い念ではない感じがする。
「中に入ることは、できないですよね?」
「無理ですね。鍵が掛けられていますし、他人の家ですから」
「現在は、どなたが管理されているんですか?」
えっと。
そう前置きして、須崎さんが説明してくれた。
「近所の住人が、やってます。この家の最後の家主さんは、生涯独身で、後継ぎの方がいません。遺言書が遺されていて、『この地区の憩いの場にしてほしい』とあったそうですよ。市と協議した結果、遺言書に従いました。管理は基本的に、近所で行っていますね」
須崎さん、詳しいなぁ。
この年で、近所の事まで知っているとは。
「鍵は、ご近所の方皆さんが、お持ちですか?」
「多分、ありますよ。もしかしたら、俺んちもあるはず。聞いてみますね」
そう言うと、踵を返し、須崎さんは自宅に向かった。
「須崎さんって、凄いよね」
「まぁ、クラスでも成績優秀だし、スポーツはそれなりにできる。憎む奴はいないんじゃないかな」
「良い友人を持ったね。桃麻」
「華鈴は、高校どうなの?」
唐突な質問。
「見える人同士で仲良くしてた。男子なんだけどね」
「過去形?」
「今ちょっと、ケンカしてて」
「ケンカするほどなんとやら。って、あるだろ」
「お待たせしました~!」
須崎さんが戻って来た。
「ありましたか?」
「はい。じいちゃんに、『友達と使いたい』って言ったら、大丈夫でした」
「んじゃ、入ろう!」
桃麻が先頭にいっている気がするけど、まぁ、いいか。




