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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第陸話 空き家に住む者
44/130

第陸話 参

 土曜日。午前九時。

 待ち合わせは、この前のファミレス。


「あっついな~。それにしても、来ないな、級長」


 何故か、桃麻(とうま)もついて来た。


「桃麻、妖怪がいるかもしれないんだよ? 危ないよ?」

「それは華鈴も同じだろ? 妖怪が見えるってことは、華鈴は妖怪に目をつけられやすい!」

「だから、ついて来たの?」

「興味本意に決まってんだろ!!」


 ドヤっ。


 いや、そんなドヤ顔をされましても……。

 と、言いたいけど、我慢我慢。


「ごめーん! 遅くなった!」


 声が聞こえてくる方を見ると、須崎さんが、走ってくる。


「ごめんなさい! 寝坊しちゃって。本当、申し訳ない!」


 深々と頭を下げられた。


「お気になさらず。時間はまだ、たくさんありますし!」 

「級長も、寝坊する事あるんだな!」

「と、とにかく行こうか!」


 ***


「ここか?」

「大きな一軒家ですね」

「そう。で、あっちが俺の家」


 須崎さんの案内で、例の家に到着。


「妖怪の気配ですけど、いますね。かなり強い念を感じます」

「華鈴、スゲー! 妖怪が見えるだけじゃなかったんだぁ!」

「俺の勘違いじゃなかったって事ですよね!」


 なんだろう。

 強い念だけど、悪い念ではない感じがする。


「中に入ることは、できないですよね?」

「無理ですね。鍵が掛けられていますし、他人の家ですから」

「現在は、どなたが管理されているんですか?」


 えっと。

 そう前置きして、須崎さんが説明してくれた。


「近所の住人が、やってます。この家の最後の家主さんは、生涯独身で、後継ぎの方がいません。遺言書が遺されていて、『この地区の憩いの場にしてほしい』とあったそうですよ。市と協議した結果、遺言書に従いました。管理は基本的に、近所で行っていますね」


 須崎さん、詳しいなぁ。

 この年で、近所の事まで知っているとは。


「鍵は、ご近所の方皆さんが、お持ちですか?」

「多分、ありますよ。もしかしたら、俺んちもあるはず。聞いてみますね」


 そう言うと、踵を返し、須崎さんは自宅に向かった。


「須崎さんって、凄いよね」

「まぁ、クラスでも成績優秀だし、スポーツはそれなりにできる。憎む奴はいないんじゃないかな」

「良い友人を持ったね。桃麻」

「華鈴は、高校どうなの?」


 唐突な質問。


「見える人同士で仲良くしてた。男子なんだけどね」

「過去形?」

「今ちょっと、ケンカしてて」

「ケンカするほどなんとやら。って、あるだろ」



「お待たせしました~!」


 須崎さんが戻って来た。


「ありましたか?」

「はい。じいちゃんに、『友達と使いたい』って言ったら、大丈夫でした」

「んじゃ、入ろう!」


 桃麻が先頭にいっている気がするけど、まぁ、いいか。

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