第陸話 弐
次の日。
昼休みに桃麻からメールがあった。
『今日なんだけど、もう一人来ても良いか? 高校の同じクラスの奴なんだけど、幽霊って言うか妖怪のことで、相談したいらしい』
妖関連の相談かぁ。
森に行かないだけ、まだ良いかな。
『わかった。いいよ。場所は、ファミレスで良いんだよね』
送信。
森に行かず、誰にも相談せず、依頼を完全一人で行うのは、初めて。
危なさそうなら断れば良い。だけど、私には式神の白牙がいるから、なんとかできるかもしれない。
話を聞くだけ、聞いてみよう。
***
「かりーん! こっちこっち!」
「ごめんなさい、遅くなっちゃって」
ちょうど入り口の所に、桃麻がいたから、駆け寄る。
「もう一人来るんだよね?」
「すぐ来るはずだけどなぁ。あ、来た来た」
桃麻の視線の先。
桃麻と同じ制服を着た、男子がいた。
「笹本、お待たせ。この子が、笹本が言ってた?」
「そう。とりあえず、中入って話すとしようよ」
四人掛けのテーブルに案内された私たち。
私の向かいに、桃麻の友人と思われる男子が座り、その隣に桃麻。
「簡単に紹介する。この前級長に話した、俺の幼なじみの、雪村華鈴。妖怪が見える」
桃麻は、そのまま私に視線を移す。
「俺のクラスの級長の、須崎舜。華鈴に、妖怪関連の相談をしたいらしい」
「はじめまして。笹本と同じクラスの、須崎です」
須崎さんは、かなり礼儀正しい人のようだ。
級長をしているらしいから、成績優秀な人でもあるのだろうか。
「こちらこそ、はじめまして。雪村です。相談と言われても、何もできないと思いますよ?」
「妖怪が見えるんですよね? 妖怪と、話すことできますか?」
「その妖怪に会ってみないことには何とも……。とりあえず、須崎さんのお話だけでも、聞かせてください」
「俺、小学校を卒業するまで別の市に住んでたんです。両親が離婚して、今は母親と一緒に、こっちにある母方の祖父母の家に、住んでます」
「級長、大変だな」
「桃麻、黙って」
「すんません」
続けて下さいと、目で合図。
須崎さんはわかってくれたようで、安心。
「それで、はす向かいの家があるんですけど、その家、十年以上も空き家で、鍵も掛かってる。なのに、毎日その家に、人間のような影が見えたり、家の前を通ると、走ってる足音が聞こえてきて。その家の家主さんは、もういないので、人間の仕業じゃないと思います。それに、その家の前を通ると、悪寒がするんです」
「この話は、他の方はされていますか?」
「俺だけです。祖父母にも、母にも言ったんですけど、相手にしてくれない。どうせ見間違いか、ネズミだろうって」
「そうですか。妖の可能性もありますが、ネズミの可能性もあります。そのお宅を、拝見しなければなりませんね」
「華鈴、そんなこともやってくれるんだな!」
「まぁ、一応。高校生になってから、妖関連の依頼を受けてるの」
「なんだそれ?」
「複雑なの」
桃麻に向けた視線を、須崎さんに向ける。
「須崎さん。今週の土曜日、空いてますか?」
「土曜日ですか。はい、空いてますよ」




