第陸話 壱
響希君と僚君と話さなくなって数週間。
気づけば梅雨入りし、いつの間にか明けていた。
もう七月。
梅雨明けすぐにやって来た猛暑に、身体がついていかなくなっている。
「あっつい……」
少し我慢すれば、もうすぐ夏休み!
なにしよーかな!
なんて、考えているのは、良くない。
多分、霞ヶ森に行くことになるんだろうな……。
確か、学校行事で、一週間の夏期合宿があったはず。
自由参加だから、行かなくても良いんだろうけど。
あーあ。それにしても、暇だなぁ。帰っても何もする事ないし。
だからと言って、森に行くのも気が引ける。
家まで数百メートル。足取りが重い。
「華鈴?」
背後から、声をかけられた。振り返り、声の主を確かめる。
「桃麻……?」
すぐ後ろにいたのは、自転車を押した、保育園から中学までの幼なじみ兼ご近所さんの、笹本桃麻。
歩きながら、久しぶりに話す。
「今、帰り?」
「うん。桃麻も?」
「俺もなんだけど、部活サボった」
「それはダメでしょ!? 桃麻、何部なの?」
「ん? 帰宅部」
あっさり言いはなった。
「それは、サボるもなにも……」
「アハハ! 気づいた?」
「ま、私も帰宅部だから、怒れないけど」
「華鈴も帰宅部なのか! 同類がいてくれて良かった~!」
同類とは一体、何なんだろう。
まぁ、桃麻は相変わらず、桃麻のまま。
「華鈴はさ、まだ幽霊とか妖怪が、見えるの?」
唐突に聞かれた。
だけど、桃麻は既に知っている。
見えることが原因で、いじめられていた頃、桃麻だけは味方でいてくれて、助けてくれた。
私にとっては、唯一の理解者。
「見えるよ」
「そっか。小中の頃みたいに、いじめられてないか?」
「大丈夫。見えることを知っている人は、あんまりいないから」
「華鈴が行ってる高校には、同じ中学の奴いないんだっけ?」
「うん。私だけ」
「友達できた?」
「少ないけど、いるよ」
幼なじみと久しぶりに話すのは、なんだか楽しい。
「それは良かった~。心配しなくても大丈夫そうだな」
「そう言う桃麻は、高校生活を満喫してるの?」
「満喫してるけど、リア充とは遠い生活してる」
「可愛い子とかいないの? 桃麻、モテそうだけどね」
「いるっちゃ、いる。けど、外が良くても内がねぇ」
そろそろ家が近くなってきた。
「明日の放課後、空いてるか?」
「空いてるよ。帰宅部だからね」
「久しぶりにさ、どっかで話さね? ファミレスとか」
「いいよ。柊通りにファミレスあったよね。そこにする?」
「お互いの高校からちょうど良い距離だし、そこにするか! あ、連絡先教えて」
カバンからスマホを取り出し、連絡先の交換。
「んじゃ、また明日。何かあったら、連絡する」
気づいたら私の家の前。
桃麻はそのまま、歩いて行った。




