第伍話 伍
――家々が、変わった形をしておるな――
――時代が変わったのさ。妙月の生きていた時代は、とっくの昔に終わっているのだから――
――それもそうだな。何年前になるのだ?――
――千年。あっという間だった――
――こうして、またキノカサと話せる日が来るとはな――
――俺も驚いている。まさか、生まれ変わって、娘になっていたとは――
巾王神社に向かって、私の身体は、飛行中。
キノカサは自らの羽で。
妙月様は、私の身体に妖術をかけて、キノカサと並んで飛んでいる。
――術で、飛ぶことができるんですね。妙月様――
意識の片隅から、妙月様に聞いてみた。
――キノカサのように長くは飛べんがな――
――着いたぞ――
――お待ちしておりました。妙月殿――
ん? シキの声?
――シキ殿。それに、その者たちは?――
シキの他にも誰かいるようだけど、妙月様を通して見ると、わからない。
――妙月殿の魔封術を見たいと、連れて参りました。ご迷惑であれば、今すぐにでも帰しますので――
――何も、迷惑などない――
――殺鬼の気配が近い。昼間から、活動を始めているようだ。今すぐ始めるぞ、妙月――
――わかっておる。我ら以外に、人間はおらぬな?――
――おりません。我々は少し離れます。ご準備をされよ。妙月殿――
妙月様は、落ちている木の枝を探し始めた。
きっと、陣を描くのだろう。
――キノカサ。そなたの羽を三枚、くれまいか――
――言われるまでもない。前もって、用意はしている――
殺鬼の気配が強くなってきたように感じる。
近づいて来ているのかな。
昼間に活動している殺鬼に、少し不審感を抱く。
――この気は、一体?――
妙月様が何か呟いた。
その声は、私にしか聞こえていない様子。
――どうかしましたか? 妙月様――
私が聞くしかない。
――殺鬼以外の気を、感じたのだ。嫌な気だ。殺鬼を操っている――
――悪しき妖がいるんですか?――
――妖ではなく、人間だ。おそらく、封印を解いたのも、その人間だ――
人間が、殺鬼の封印を解いた。
殺鬼を操って、一体何をするつもりなんだろう。
――よし、描けた。始めるぞ――
キノカサが、三つの陣それぞれの中央に、羽を置く。
その上には、妙月様が用意した紙人形。
意識の中でも、聞き取れないほどの小さな声で、呪文を唱え始めた妙月様。
呪文に引き付けられるように、三体の殺鬼が神社の境内にやって来た。
陣は大きくなり、神社の境内全てを飲み込む大きさに広がる。
――闇より出でて、闇より黒く。かの者封ずる、鎖とならん――
ギギャア。グゥオオオン。
殺鬼たちは苦しいのか、うめき声を上げて、紙人形の中へと吸い込まれていった。




