第伍話 肆
その後。
お昼頃まで、シキやキノカサ、響希君と僚君。はたまた汰矢にまで、説得され続けた。
「何度言われても、何を言われても、私はやれないよ! 無理だよ! 殺鬼に殺られるだけだよ!」
『華鈴だけが、頼りなんです!』
『華鈴殿、お頼み申す!』
『俺がついているんだ、何を心配している? 妙月は俺を信じてくれたぞ』
「りんちゃんにしか、できないんだよ?」
「封魔師になれるチャンスを失うぞ!! 華鈴!」
うわぁーん!
誰か助けてぇ~!
もう、こうなったら、やればいいんでしょ!?
やれば!
「わかった! やるよ! だけど、ダメだったら文句言わないでね!」
『いや。いっそのこと、華鈴の無意識の記憶にいる妙月を呼び出す。身体は華鈴だが、中身は妙月。妙月ほどの奴ならば、身体が違えど、術は使えるだろう』
***
受けてしまった……。
『一時的に、お前の身体は妙月のモノになる。不安だろうが、終わり次第、身体は華鈴のモノだ』
「はいぃ……」
木の間で行われることになって、キノカサと二人で木の間に籠る。
椅子に座り、目を閉じると、キノカサから念が送られてきた。
――聞こえるか? 妙月。聞こえたら、九字の印を結んでくれ――
キノカサの念から聞こえる声と同時に、ひどい耳鳴り。
――少し、身体をお借りする――
――貴方が、妙月様?――
――そうだ――
妙月様と身体の中で入れ替わる。
ただ、身体は私のモノだから、意識の片隅に、私は居ることができた。
意識の中で、キノカサと妙月様のやり取りが聞こえてくる。
――殺鬼の封印が解かれている。付近に住む妖たちが、襲われているようだ――
――あの封印は、簡単には解けないはずだがな……。いつ、解かれたのだ?――
――数年前だ。ただ、最近になって活動し始めてな――
――それは奇妙だ。すぐにでも封じよう――
――頼んだ、妙月。また、力を貸そう――
立ち上がる妙月様。そして、キノカサの後を追うように、木の間を出た。
外に出るのだろうか。
階段を降り、一階へ。
――ここは、何なのだ?――
――ここか? ここは『紅蓮荘』。妖の楽園だ――
――妖の? しかし、この娘は、人間ではないか?――
――そうだが。ちと、複雑な理由があってな。よく遊びに来る――
――それは、意識の中で問うとしよう。それよりキノカサ。旅は続けているのか?――
――時々な。一人旅も、中々面白いぞ――
――おや。終わりましたか?――
シキの声だ。
――あぁ。すんなりいったぞ――
――それは良かった。お初にお目にかかります。妙月殿――
――妖狐殿。お見受けしたところ、汝は、シキ殿か? あのお方の――
――えぇ。その話は、後日にでも――
何の話だろう。
――とりあえず、俺たちは巾王神社に向かう。そこで、封じる――




