第伍話 参
「少しは、落ち着いたか?」
私の部屋に戻ると、響希君と僚君が、一緒にいてくれた。
「うん。ありがとう、二人とも」
「礼には及ばないよ。りんちゃん、何かあったでしょ? もしかして、殺鬼の邪念を感じとったの?」
僚君に聞かれたけれど、そんなんじゃないんだよ。
首を横に振る私に、二人はこれ以上聞いてこない。
雨音だけが聞こえる空間。
居心地は良いはずなのに、心はモヤモヤしたまま。
「二人は、生まれ変わりを信じる?」
唐突に、聞いてみたくなった。
きっと二人は、答えてくれるだろう。
「僕は、信じるかな。面白そうじゃん。昔、生きていた人の記憶があるかもしれない、なんてさ」
「俺もだな。小さい時から、その類いは信じてた」
『生まれ変わり』を信じる二人で、良かった。そうでなければ、このことを話せないままだ。
「あのね、シキとキノカサに言われたの。私……」
シキとキノカサから言われたことを、二人に話す。
「りんちゃんが、妙月の生まれ変わりねぇ……」
「華鈴が陰陽師か……」
驚きと興味の眼差しを向けられた。
あれれ? なんだか、思った様子と違う?
「あの~。二人とも?」
「正直、羨ましい!」
「だよな。封魔師は、今や滅びゆく職業だと、聞いたことがある。妖も人間も救えるなんて、凄すぎる!」
「えっと、二人とも、待って」
「いやいや。こんな凄いことで悩んでいたなんて、りんちゃん、羨ましいぞ!」
「いや、だからぁ!」
「良いんだぞ、華鈴。封魔師なんて、なれる人間はほとんどいない。現代の女封魔師なんて、カッコいいだけだ!」
ダメだ。
封魔師は、二人の憧れだったのかぁ。
「『妙月様の生まれ変わり』なだけで、魔封術を実際に使えるわけじゃないんだよ?」
「キノカサから聞くとか、妖念感の力で、魔封術を呼び覚ますとか?」
「今から封魔師の修行はできないからな。それが良いだろ」
『殺鬼封じの術なら、俺が教えよう』
ドアの向こうから、キノカサの声が聞こえた。
ドアを開け、キノカサを招き入れる。
『聞こえてたぞ。封魔師になる覚悟はあるか? 華鈴』
えぇ!!
殺鬼封じは、私がやるの!?
「私、殺鬼封じなんてできないよ! 絶対! 難しそうだし、それに! 殺鬼封じをやるなんて、私、一言も言ってない!」
無音。
雨音でも聞こえれば良かったのに、止んだみたい。
『妙月の生まれ変わりであるお前がやらないで、誰がやるんだ?』
「キノカサ……」
『何度も言わせるな。俺自身に魔封術が使えるわけではない。だから、華鈴の記憶の中にある、妙月の記憶から魔封術を呼び覚ますしかない』




