第伍話 弐
次の日。
梅雨の影響で、朝からどしゃ降りの雨。
一階に降りると、烏天狗の汰矢が、廊下の窓から外の見ている。
「おはよ。汰矢」
私が近寄ったことに気づかなかったみたいで、身体をビクッとさせた。
『華鈴殿。これは失礼した』
言葉使いもだけど、軽くお辞儀するところは、なんだか武士みたいな感じ。
「何を見てたの?」
『あの池を。紅蓮の花は、永世の花。ここに咲くのは、珍しく思えたので』
「へぇ。あの花、この世には咲かないんだ?」
『ご存知なかったか?』
「うん。普通に咲いてるから、気にしなかった」
『華鈴。少し良いですか?』
ふと、シキの声が聞こえた。
『おや。汰矢殿とご一緒でしたか』
「おはよ、シキ。話があるの?」
『えぇ。ここではなんですので、場所をかえて』
『木の間』で、シキと向かい合って座る。
「それで、話って何?」
少し間が空く。
そして。
『昨夜、響希と僚から、聞きましたか?』
「私自身のことだよね。聞いたよ」
『妖念感の能力が、凄く稀であることも、二人が話したはずです』
「結局、何が言いたいの?」
『妖眼と妖念感の能力を両方持つ人間は、今までに、妙月殿だけ。そして、現在。華鈴が能力を持っている』
『つまり、華鈴。お前は、妙月の生まれ変わりだ』
背後から、キノカサの声。驚きながらも振り向いて、キノカサと話す。
「聞いてたの?」
『昨夜からな』
「私が、妙月様の生まれ変わりなんて……」
『あり得る話だ。信じたくないかもしれないが』
キノカサは続ける。
『華鈴が、妙月の生まれ変わりなら、妖念感の力で、魔封術が使えるかもしれない。殺鬼を封じられる』
***
信じられなかった。
もしかしたら、信じたくなかったのかも。
だけど、いきなり『越後の国で活躍した封魔師、朱音寺妙月の生まれ変わり』なんて言われたら、誰だって信じたくない。
私が、妙月様の生まれ変わり……。
私が……。
「りんちゃん?」
「どうしたんだ? 華鈴」
二階に続く階段の踊場。
外で降り続く雨音をBGMに、ステンドグラスの窓を見ている。
二人が階段を上ってくる足音を、聞いていなかった。
「華鈴?」
「ふぇ!?」
響希君の声で、我に返る。
「あ、ごめん、二人とも」
「何かあったのか?」
「なんだか、変だよ?」
「大丈夫だから。ちょっと、考え事してただけ」
二人は、知っているんだろうか。
私が、シキとキノカサが言う、『妙月様の生まれ変わり』だと言うこと。
妖念感を使って、魔封術を使えるかもしれないと言うことを。
「部屋に戻るか?」
「一緒にいた方がいいかな?」
二人の言葉に頷く。
今は、ひとりになりたい気持ちと、誰かと一緒にいたい気持ちが、ごちゃ混ぜ。
自分でもどうしたらいいのか、わからない。




