第肆話 伍
「うっわ。真っ暗……」
二階の書庫の扉を開けると、分厚いカーテンにより、陽の光が入って来ない、真っ暗な部屋が現れた。
「電気を点けなきゃ。響希、そっちにスイッチある?」
「ちょっと待て……。あ、あった」
カチッ。
スイッチの音が聞こえた後すぐに、書庫の電気が点いた。
「すごいな、ここ……」
狭い部屋の中に、いくつもの本棚が並び、その本棚には、何冊あるのかわからないほどの大量の書物。
「この中から、探すんだよね? 妙月様のことを」
「僚に、便乗しなきゃ良かった……」
「えっ、僕のせい?」
少しの沈黙の後。
「とりあえず時間はたくさんある。妙月様のことと、殺鬼の対処法が書かれている書物を探すぞ」
響希君が口を開く。
「式神も呼ぼう。その方が早く見つかるかもよ?」
「それいいじゃん! 僕ら三人だけで、なんとかなる量じゃないもんね」
後の行動は、三人一緒。
「白牙、召来」
「黒牙、召来」
「斑牙、召来」
それぞれの式神を呼び出す。
『華鈴。何か用? 外に出るの?』
「そうじゃなくて、このたくさんの書物の中から、妙月様に関することと、殺鬼の対処法を調べたいの」
『妙月様!? お前たち、妙月様のことを調べるつもりか!?』
黒牙は驚き、目を見開く。
『僚殿。妙月様のことを調べ、何をなさるおつもりですか?』
斑牙も驚いているようで、僚君に聞いている。
「もしかして、妙月様のこと、何か知ってるの?」
私の質問に、式神たちは反応した。
『当たり前だよ!』
『式神で、妙月様を知らない者はいない』
『確か、妙月様の式神は、キノカサ殿ですよ』
式神たちの話をまとめると。
千年前の、越後の国で活躍した封魔師なのだそう。
越後の国で生まれ、魔封術の修行のために、三歳から京の都へ単身移住。
絶食、寺社仏閣への巡礼、洞窟内修行等、数多くの修行を果たし、十五歳で越後の国へ戻ってきた。
当時十五歳の妙月様が目にした越後の国は、あの時のようなモノではない。
鬼が彷徨き、人々や妖を喰らう光景が、そこに広がる。
***
どこからか入ってきた柔らかな風。
その風に眠らされるように、まぶたが重くなって……。
ドサッ!
「りんちゃん!?」
「華鈴!? どうした!」
響希君と僚君の声が、遠くに聞こえた。
ヒンヤリとした床が、今は気持ちがいい。
このまま、眠ってしまいそう。
――そなた、ここにいると喰われるぞ――
キノカサのような、キノカサとは違うような声。
真っ暗な視界に、一筋の光が差し、私はその光に向かって走った。
息が切れるけど、そんなの気にしない。
光に手が触れた瞬間、私の意識の中に、ある光景が写し出された。




