第肆話 弐
「静かだね。白牙たち、何してるんだろ」
あれから、どのくらい時間が経ったんだろう。
「お腹空いた。響希、何か食べるもの、買ってきてよ」
「今は下手に、ここから出ない方が良いだろ。鬼が彷徨いてんだぞ」
「怖いの? 響希君」
「べっ、別に、怖いわけじゃない!」
『お前たち、腹空いているのか?』
キノカサの声。
『俺がついていくから、何か食い物を買いに行くか?』
「いいのか?」
『構わん。行くなら、今がいい。殺鬼は陽の光が苦手でな。あまり出てこないだろう』
キノカサと響希君が買い物に行くことになり、シキと僚君と一緒に、お留守番。
『終わりました。烏天狗殿は、眠ってらっしゃいます』
斑牙がドアを開け、呼びに来た。
中には入らず、部屋の外で式神たちと話す。
『響希はいないのか?』
「響希なら、キノカサと一緒に買い物に行ったよ」
『そうか。なら、良いんだがな』
数十分後、コンビニの袋を持った響希君とキノカサが帰ってきた。
「ただいま。適当に色々買ってきた。金は後で貰うからな」
「ありがと。響希君」
「おごりじゃないの? たまにはおごってよ。響希」
「華鈴みたいに、礼のひとつも言えないのか?」
「僕らさ、何年の付き合いだと思ってんの?」
「こらこら。お二人さん」
『外の様子は、どうでした?』
シキが、響希君とキノカサに聞く。
「何も感じなかった。キノカサの言う通り、陽の光を恐れてたんだろ」
『烏天狗の件がある。森に住む者たちが騒いでいたぞ。シキ、どうする?』
少しの間、考えるシキ。
『話すべきか……。キノカサ、森に住む者たち全てを、朧池に呼んでください』
『わかった』
そのまま、キノカサは外に出た。
森の住人を呼びに行ったのだろう。
***
キノカサが呼んだ妖は、多からず少なからず。
朧池に集まった、霞ヶ森に住む妖たち。
『よく集まってくれました。今、紅蓮荘の中には、深手を負った烏天狗殿が、休まれています』
シキの話が始まる。
『烏天狗殿は、皆も知っているであろう、殺鬼に襲われたのです』
ガヤガヤ。ザワザワ。
『殺鬼が現れたのか!?』
『封じられていたではないか!!』
そんな声が聞こえる中、シキは。
『大丈夫。この森に入ることはできない。森を覆う結界が、殺鬼を追い払ってくれるでしょう。しかし、油断はできません。皆、警戒してください』
『シキ。その言葉を、信じていいんだな?』
『はい』
シキの強い眼差し。
今は、この言葉を信用するしかない。
妖たちだって、自らの身の安全が優先だ。
「これから、どうなっちゃうの?」
「わからないよ。鬼が出たんだから。夜は特に、危ない」
「夜は、ここに泊まろうと思う。親には、『友達の家に泊まる』と伝えればいいからな」




